沖田双子妹
□瞳孔開いてるけどいいの?
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「あのぉ、すいませーん」
「あ?」
勝った人の命令を聞くと言う暇潰しじゃんけんで負けた沖田と近藤は夕飯を買いに、土方はなまえが望んだアイスを買いに、パラソルから出た。
夕飯組とは違って早くに買い終わった土方は、アイス片手になまえが待つ場所へ向かっていた。
その途中かけられた声に振り向くと、自分と同い年くらいの女3人が頬を赤くして立っていた。
「お一人ですかぁ?」
「連れがいる」
「でも今はいませんよねぇ?」
「向かってる途中なんだよ」
また逆ナンというやつだろうと、適当に返して前に進もうとしたが、女たちの方が先に目の前に来ていた。
めんどくせェな。内心で舌打ちをする。思っていても女たちへ向けてしないところが土方の優しさだろう。沖田なら確実にやっている。
「私たち今暇しててぇ。お兄さんよかったら遊んでくれません?」
「はあ?話聞いてたか」
「聞いてたけどぉ、そんなこと言わないで、ね?」
アイスを持っていない方の腕を取られ、ぎゅむっと女の胸を押し付けられた。ぞわりとした不快感に剥がそうとすると、それより早く女がプールへと飛び込んだ。
「きゃあ!」
「あら、ごめんなさい?汚いものが張り付いてたから」
女がいた位置にはシートに寝転んでいるはずのなまえがいて、土方は目を丸くさせる。
「なまえ!?」
「トシー、待ちくたびれたよ。早く戻ろう」
「トシ!?」
自分のことは小さい頃からトシ兄と呼んでいたため、何があったのかと顔を覗き込めば、それはそれは楽しそうに口端を上げていた。
「(ドS降臨…)」
「ちょっと貴女誰?彼から離れなさいよ」
「貴女たちこそ何?トシはあたしのだけど」
「まさか彼氏?」
「んー、そうだよ」
「フン。そうだとしてもあなたのような小娘には釣り合っていないわよ」
腕に身を寄せたままのなまえの目が、キランと光った。土方はあーあと思うも何も言わず、静かに煙草を口に加えた。
「トシにはあなたたちみたいな年増女も釣り合わないと思うよ」
「な、何ですって!?」
「だから年増。耳まで遠いの?耳鼻科はターミナル近くのがオススメだよ。
何てったって世にも珍しい豚専用だからね」
Sっていうか毒舌だよなと土方は冷や汗を流しながら、腕にいるなまえを見下ろす。キラキラ楽しそうに目を光らせ、次はどうしてやろうかと考えているのが簡単に想像つく。
女たちは真っ赤な顔をして唇を噛み締め、侮辱の言葉に耐えていた。その苦痛に歪んだ顔がなまえのS度を高める要因だと彼女たちはもちろん知らない。
「小娘の癖に生意気な!私たちのどこが豚なのよ!」
「んんん?あれ、あたしも耳聞こえなくなっちゃった」
「あはははは!失礼なことばかり言うからよ。あなたこそその豚専用の耳鼻科にでも行ったらぁ?」
「おっかしいなあ。あなたが喋るとブーブー聞こえるんだよね」
にんまり笑ったサディスティク星のお姫様に、女たちはキィィィ!と背を向けて去ることしかできなかった。