沖田双子妹
□ハプニングには冷静な対応を
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「バーから手を離さないようお願いします」
「うわあ!楽しみ!」
「…つか流れ速すぎじゃね?」
「では行ってらっしゃいませ」
笑顔のスタッフに手を振って、いざ行かん!と水流にボートが乗ったその瞬間、
「「ぎゃあああああ!!!!」」
「キャハハハハ!速ーい!」
「おっ、なまえ見なせェ!二足歩行のネズミがいる!」
「ホントだあ!可愛いー!」
「この速さでよくネズミなんて見えたなうおおおおお!」
「トシ、俺もう吐きそう」
「やめろ!吐くのだけはやめてくれ!」
「見て見て総悟!あそこに海賊がいる。キャプテンかつーらいないかなあ」
「さすがにいるわけ…」
「ど、どうしたんだよ」
「「いたっ!」」
「マジかよどこに俺も見たぎゃああああ!不意打ち回転ンンン!」
4人乗りで前に総悟となまえ、後ろに近藤と土方が乗っている。煩い後ろ2人をシカトして、沖田双子は楽しそうに笑っていた。
しかしこの4人がいて全てが平和に終わるわけがなかった。
「ねえ、総…」
なまえが沖田の方にいたキャラクターを指差した時、
ガタン!
「え?」
「は?」
なまえの安全バーが突然外れた。
その時は緩やかな流れだったが、次に来るのはこのスライダーのラストを締める下り坂。この坂を降りてプールに飛び込むのだが、如何せん急降下なためバーに押さえられていない身一つではとても危険だ。
「マジで壊れちまってる」
「や、やばっ!どうしよ総悟!もう下り来ちゃう!」
「落ち着くんだなまえ!でもどうしよう!」
「チッ、急停止ボタンはねーのか!」
土方がバーに体を押さえられながら懸命にボート内を見る。そんなことをしている内に、ザァァと水が流れ落ちる音が聞こえてきた。
「そ、総悟っ」
「っ、なまえこっち来い!」
「でも総悟が」
「早くしろ!!!!」
「っ」
なまえは席を離れ沖田の膝に横向きに乗る。
沖田はバーから手を離し膝に乗ったなまえの背中と腰に腕を回す。
なまえも腕をぎゅっと首に回し、後ろの近藤と土方は腕を伸ばして2人を固定した。
ザァァァァァ
水音が近づいてきた。
「来るぜィ」
「…うん」
「なまえ、しっかり掴まってるんだぞ!俺たちも押さえてるからな!」
「離すんじゃねーぞ総悟!」
目の前の景色が消え、ボートの角度が変わった。
「大丈夫だから目瞑ってろ!」
「うんっ!」
ザァァァァァッ!
ボートが勢いよく下り坂を滑り落ちた。
浮遊感と重力が腕の力を奪っていくが、沖田は絶対離すまいとキツく抱き締め、それに呼応するようになまえも首に縋り付いた。
風が体を切り、フワッと体が浮いた瞬間、
バッシャァァァン!
ボートはプールに飛び込み、盛大に水飛沫が上がる。顔から滴る水を感じながら、沖田は腕の中のなまえを見る。
「大丈夫か」
「ごほっ。うん、大丈夫」
水がかかった際気管に入ったのか噎せていたが、なまえはにっこり笑った。
それを確認して沖田は力が抜けたように笑い、またきつく抱き締めた。