沖田双子妹
□見回りは絶好のサボり時間
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「なまえェ、行くぜィ」
「はぁい」
2人はいつも一緒にいた。なまえが事務処理中や沖田がサボっている時以外は、ほとんど一緒だった。
今日も見回りと称した駄菓子屋漁りに、2人仲良く屯所から出て行った。
「このグミ美味しいよね」
「そのソーダ味うめぇ。スルメどうする?」
「買う!あとんまい棒とラスクと」
「うずまきの飴は?」
「食べたいけどちょっと大きいかなあ」
「じゃあこのちっこい飴玉にすっか」
「うん。あたしコーラ味」
「俺もコーラ味」
「ねえ串もあるよ。どうする?」
「あー…串とアイスとどっちがいい?」
「アイス!」
「おばちゃーん。これらとガリゴリくん2つくれィ」
アイスを口に加え、適当に見つけたベンチに座る。陽射しは頭の真上にあり気温は高かったが、木陰に守られたベンチは涼しかった。
ガリゴリとアイスを噛み砕く沖田の横で、同じようになまえがガリゴリと食べる。ミーンミーンと蝉が鳴き、公園では子供たちが遊んでいた。
「平和だね」
「平和だねィ」
食べ終わったアイスの棒をゴミ箱に捨て、人目につかない林に入り木の根元に座った。
暑いけれど離れる気は毛頭ないため、肩を寄せ互いに凭れる。沖田が空を見上げればなまえも見上げ、なまえが花を見れば沖田も見る。
風にそよいだ長い栗色が沖田の視界に入ったので、耳の上で1つに縛られている髪を手に取り、何となく枝毛がないか見る。
「あったー?」
「今んとこねぇ……あ、あった」
「マジでか。けどハサミ持ってないや」
「あるじゃねーか」
「え?」
チャキ
耳に慣れた音がして沖田を見れば、腰に刺さる鞘から刀を抜いていた。
「切るの枝毛だけにしてね!?せっかく伸ばしたんだから短くしないでね?」
「手元が狂ったらワリィねェ」
「なんで首筋に当てるのかな?誰が介錯しろって言った?」
「枝毛にした罪でさァ」
「ただの枝毛のくせに重罪!すっごい重罪!」
騒ぐなまえの髪から手を離さず、ほらよと刀で素早く切った。
「…ありがと。お礼に総悟のも見てあげる」
「俺のキューティクル馬鹿にすんな」
「アンタのキューティクル事情なんて知らねぇよ」
肩に凭れる沖田の肩をずらし、自分の膝に頭が乗るようにする。うおっ、と声を上げた沖田が見上げる先にはなまえがいた。
「なんでィ」
「総悟髪サラサラ。男風呂ってシャンプー何使ってんの?」
「たしかヴィダルサスーンだったぜィ」
「へえ。牛乳石鹸じゃないんだ」
「使ってるヤツもいるけどねィ。原田とか」
「ああ、髪と体まとめて洗ってるんだね。マネしたくないけど楽そうで羨ましい」
「ホントでさァ」
地肌を触るか触らないかの位置で髪を梳かれ、だんだんと瞼が重くなってきた。そんな沖田を見てくすりと笑い、前髪を分けて額に手を当てる。
「気持ちいー」
冷たい手は火照った体を冷ましてくれた。さらに眠気に襲われ、膝の上で体を回転させなまえの腹を向く。
両腕で細い腰を抱くと、こめかみにキスが落とされた。
「おやすみ、総悟」
優しい響きは誰かによく似ていて、泣きたいような笑いたいような気持ちになる。顔を見られないよう、沖田はなまえの腹にぎゅうっと顔を埋めた。