短編
□その後
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あの後なまえさんは帰っていった。来た時と同様緩やかに車を走らせ、ネオンの輝く街に消えた。
「オイぱっつぁん、開けてみろよ」
「はい」
2人が協力して作ってくれた料理を食べて(普段しないだけで銀さんは料理ができる)、居間で寛いでた時に銀さんが言った。
隅に置いていた4つの箱をソファーに置き、まずは1番大きい箱。
プレゼントだって分からないようにするために、包装は至ってシンプル。丁寧に包装紙を広げ、出てきた箱を開ける。
中を3人で覗き、
「…」
「…」
「コレ、あのゴリ」
「それ以上言わないで!お願いだから言わないで!」
また閉めた。
中に入っていたのはゴリ…いや、近藤さんの等身大人形。少しデフォってあるけどそれでも近藤さんは近藤さんで本人がいるみたいだった。
どうりで大きいわけだ。あの人真選組の中で身長も体格も1番みたいだし。
「つかこれどうしろと!?あれか?ネネちゃんのママみたくストレス発散用に使っていいのか!?」
「新八、『義兄だと思って抱き着いておいで』ってカードに書いてあるアル」
「誰が義兄だァァァァ!」
カードを瞬時に粉々にし、次の箱を開ける。
「…沖田さんですね」
「…総一郎くんだな」
「何アルか?」
「神楽は見ちゃいけません!」
自分だけ見れなくてうがァァ!と暴れる神楽ちゃんは銀さんに任せて、これもまた箱を閉じる。
中身はSMグッズ〜初心者用〜と、生意気な女を従順なメス豚にするテクニック本だった。…姉上に見つかったら何て言えばいいんだ。
「つ、次は」
最初から気付けばよかったけど、僕の周りにはまともな人がいない。それは真選組の人だってそう。
小さめの箱を開けると、今までの流れからして予想がついて、今のところまだ使える物が入っていた。
「うげ、多串くんからか」
「マヨネーズセット!」
一般的な物からカロリー二分の一、濃厚マヨリーンなどマヨネーズのセットだった。味の違いなんて僕には分かりそうにないけど、調味料だから使えるし助かった。土方さんありがとうございます。
「最後はこれか。たしか揺らしちゃいけないんだよね」
あの人達のことだからこの箱が爆発してもおかしくない。恐る恐る机に置き、そっと開けると、
「うわぁ…!」
「おっ、」
「うまそーアル!」
中から出てきたのは少し大きめのガトーショコラ。ホワイトチョコのプレートには「新八!誕生日おめでとう」と書かれていた。
「なまえだな」
「さすがなまえアル!めっちゃ良い匂いするネ!」
「こりゃ手作りだぜ。ぱっつぁんよかったな。アイツの手作りとかなかなか食えねーよ」
そう言って銀さんはお皿とフォークを取りに行った。神楽ちゃんは目をキラキラさせてケーキを箱から出していた。
こんなに嬉しい誕生日は久しぶりで、気を緩めたらまた視界が滲みそうになる。銀さんと神楽ちゃんの誕生日は知ってるから、なまえさんたちにもそれとなく聞いておこう。
今度は僕が、お返しする番だ。
何をあげたら喜ぶかなと想像しながら、台所からお皿とフォークと、ロウソクを手にした銀さんを待った。