短編
□お誕生日おめでとう!!
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「また子、武市準備はいい?」
「OKっス!」
「完璧です」
「万ちゃん、晋助は」
「もうじき来るでござる。話し合いも順調に進んだ」
「よし、じゃあみんな待機!」
今日は高杉の誕生日。
誕生日になった8月10日ちょうどにになまえはおめでとう!と満面の笑みで言った。
眠くてうつらうつらしていた高杉はその声にそういやそんな日か、と淡白に思うも、目の前の恋人が自分のことのように喜んでくれているのを見て、ありがとうと強く抱き締めた。
その日は鬼兵隊全体がそわそわしていた。朝から彼を祝う声が響き、ああとしか返事をしない高杉にも船員は嬉しそうに顔を綻ばせた。
そして他の攘夷志士と話し合いをするため昼前に船から降りた高杉と万斉の背を最後まで確認(チラリと視線を寄越した万斉に任せた!と親指を立てれば彼も同じように返す。万斉は意外とノリがいい)して、なまえをリーダーとした高杉誕生日パーティーの準備は幕を開けた。
「また子隊、飾り付けはどう?」
「あとは輪っかとくす玉付けるだけなんで、晋助様が帰ってくる夕方までには完璧に終わるっス!」
「武市隊、プレゼントは集まった?」
「隣の部屋に全てあります。隊員、幹部と分けておきました」
「料理隊、食材は集まった?」
「はいっ!京都、萩、駿府、仙台から無事届きました。腕によりをかけて作ります!」
「よっし!準備万端ね!あたしの隊は今からケーキ作りよォォ!」
「「「おおおおおお!」」」
太陽が傾き始め、夕日が差した頃。本日の主役、高杉が帰ってきた。
「…なまえは?」
「はて、来ないでござるな」
いつも迎えてくれるなまえがいない。それを不思議に思い、高杉は真っ直ぐ自分の部屋へと向かう。
しかしそれも全て作戦の一つだった。高杉のいつもより速い歩き方にクスリと笑うと、万斉は彼とは違うある部屋を目指して歩いていった。
「あ?」
襖を開ければなまえがいると思っていた高杉は、がらんとした部屋に眉をしかめる。
中に入ると机に自分の名前が書かれた文があった。
ばさっ、豪快に開き中身を読む。
「―――――ククッ」
文を元に戻すと、高杉は来たときよりのんびりとある部屋を目指した。