短編
□過激派なんて言われてるけど
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「はい晋助」
「今日はこれか」
毎朝高杉の部屋で行われる、一連の流れ。毎日毎日変わらないこれは、すでに隊員の中でも朝の一部と化していた。
「椿か」
「うん。呉服屋さんにあってね、似合うと思って即決。どう?」
「嫌いじゃねぇよ」
鬼兵隊提督である高杉がその日に着る着流しは、恋人であるなまえが選んでいた。いつからか定かではないが、船に乗った時には当たり前となっていたから相当前だろう。
高杉が女物を着るのも、なまえが昔言った「こっちの方が似合う」の一言で決まった。実際彼も派手なものは好むので、この2人を止める者はいなかった。
「昨日は蝶で、今日は椿」
「明日は何だ?」
「それは明日のお楽しみっ。何か着たい柄ある?」
「いや、好きに選べ」
からり、と襖を開ける。なまえを自身の腕に絡めさせ、今日も女物を身に付けた高杉が幹部達と食事をする部屋へ向かう。
その間指を絡めたり頭を撫でるのはもちろん、廊下だというのに軽いキスまでする。
お分かりの通りこの2人、人目は気にしないで自分達の世界に入る人間。というか他人なんて知るか、見たいなら見ろ精神である。
そんなこんなで着いた部屋。中にはすでに幹部が揃っていた。
「おはようございますっス!」
「おはようでござる」
「おはようございます」
三者三様の挨拶に「ああ」「おはよう!」と返し席につく。それを合図に食事を取り、終わると簡単な話し合いがある。
高杉が万斉と武市が話し始めると、なまえはまた子の隣に座る。
「また子、今日仕事ないよね?」
「ないっス!どっか行くなら付いてくっスよ」
「今日はいいや。けどお茶しない?」
「するっス!」
一つの部屋で二種類の話が進む。高杉たちの方が早く終わったのか、高杉が「なまえ」と呼び立ち上がる。それにはぁいと返事をして、来たときと同様に腕を絡め去っていく。
部屋に残された幹部は、毎度ながら仲のいいツートップに相変わらず熱々ですねぇと呟きながら、いつまでも変わらないでいてほしいと思った。
「万ちゃんもいるけど、怪我しないよう気を付けてね」
「ちと話し合いに行くだけだ。夕方には帰ってくる」
「はぁい。晋助に何かあったらすぐ飛んでくから」
「クック、有言実行するのがオメーだからなァ。精々用心するァ」
「ん。行ってらっしゃい」
「ああ」
ちう、とキスをして高杉は地上に降りる。その背が見えなくなるまで見送って、朝から晴れ渡る空に一つ伸び。
「また子ー、お茶しよー」
「松屋のあんみつあるっスよー」
「いるいる!お茶は淹れるからあたしの部屋集合でー」
「了解っスー」
過激派武力派な鬼兵隊だが、意外と日常はのんびりしているのである。
(晋助おかえりー)
(ただいま。いい子にしてたかァ?)
(うん!また子とお茶してた)
(そうか。おら、土産)
(高松屋のカステラだ!ありがとう!)