沖田双子妹
□12月24日
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ふわり、ふわり
まるで地上の全てを慰めるかのように
それは優しく降ってきた
今日はクリスマスイヴ。世間はハロウィーンが終わると同時に浮かれ出し、どこもかしこも光り輝いてた。ケーキ屋の店先でサンタの格好をした店員がケーキを売り、スナックの店先で露出した女サンタが男たちを誘う。
そんな歌舞伎町ならではの光景にくすりと笑うと、隣を寒そうに歩いていた沖田は目線だけ寄越した。
「何でもないよ」
「ふーん」
ポケットに手を突っ込んでめんどくさそうに歩く兄にそう返し、なまえはマフラーに顔を埋めた。
世間がクリスマス一色だろうが、真選組には関係ない。攘夷志士は世間が浮かれて無防備な時を狙って事を起こす確率が高い。数日前から文句を言っていた2人も、土方から拳骨をもらって渋々ながら寒空の下見回りをしていた。
楽しそうな人々を羨ましい目で見つつ怪しい気配を探す。事が起こってからの処理より事前に対処した方が楽なのだ。被害も少ない、相手も怯む、だから早く帰れる。よし完璧。
「腹減った」
「夜楽しみだね。いさ兄にケーキ頼んだから高いやつ食べれるよ」
「何で?」
「妙と新八に買うついでに買ってきて、って言ったから」
「なるほど」
クリスマスの日も変わらず愛を伝えに行く近藤が、実は1番クリスマスらしいことをしているなとなまえは思った。
妙からクリスマスパーティーをやるから来ないか、と誘われていたが仕事があるからと断ったのは先日。神楽たち万事屋や九兵衛も来るらしく、手料理を振る舞うのよと妙はにっこり笑った。
仕事だから断ったが、それを聞いて初めて仕事あってよかったと思ったのは秘密だ。