短編

□だって双子ですから
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今日の討ち入りは相手の足掻きもあり、いつも以上に時間がかかった。
息をついたのは明星が輝く頃。最後の浪士が車で運ばれたのを確認したなまえは、頬に着いた血を拭って隣に立つ兄にもたれ掛かった。


「疲れたー」

「なー」


ぐてっと沖田も体を寄せ、妹に同意する。そんな2人の近くにいた隊士はくすりと笑った。


「すぐに車回しますね」

「よろしくー」

「沖田隊長、昼から見回りですからね」

「えー、土方にやらせろィ」


口を尖らせた沖田に、長い間真選組にいる隊士は慣れたように苦笑した。


討ち入りの時とは別人のような彼らの緩い雰囲気は、新人にとって戸惑いの対象だ。
普段の仕事をサボる様子しか見ていない新人は、本当にコイツらが副長補佐や隊長
なのかと疑いの目を向ける。自分より年下で仕事もできないのに幹部を任されてるのは、ただ局長や副長の幼馴染で甘やかされているからだと。

しかしいざ戦闘になると、その疑いは一気に晴れることになる。

特攻隊である一番隊と一緒になまえも先陣を切り、誰よりも多く敵を殺す。沖田と背を合わせながら互いに声をかけることなく、絶妙なタイミングで相手の隙をつく。誰にも真似できない動きと前線で戦う心の強さは、それまで彼らを信じていなかった気持ちを払拭させ尊敬の念まで抱かせるには充分だった。

たかが18歳の男女が副長補佐や隊長を任されてる意味を、ここにきて新人はやっと理解するのだ。

今回の打ち入りでもその効果はあったようで、遠くにいる新人がちらちらとこちらを見ていた。


「車来ましたね。行きましょう」

「はーい。ねぇ総悟、明日なんだけどさ」

「何でィ?」


といっても双子の最大の特徴は、恐ろしいほどの無関心と執着心が入り交じっているところだ。そこに気付くまでまだまだ時間がいるし、気付いたとしても彼らの興味の対象になるかは別だ。


沖田となまえは向けられる目を素通りして、自分たちを案内する古株の隊士の後に寄り添ったまま着いていった。





 
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