沖田双子妹
□もうそんな時期ですね
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「そろそろ毛布必要だよね。押し入れにある?」
「多分ある。でも1度干さねーと」
「じゃあ明日にでも女中のおばちゃんに言っとくね」
「おー。そういやなまえ、明日城行くんだろ?」
「知ってたんだ。うん、午後から行くよ」
「これからは、いつどこで誰と何時に何するか、逐一お兄様に言いなせェ」
「あたしは総悟の彼女か。しかも重いわ」
「言 い な せ ェ」
「はいはい。明日江戸城にいさ兄と来いって呼び出されました。いさ兄は討ち入りの件で、あたしは任務の報告だろうね」
ぴたりと、それまでちょっかいをかけてきていた総悟の動きが止まる。
「…俺、お前の仕事初めて見た」
「ああ、そういやそうかも。まさか首絞められてるとは思わなかったけど」
「うるせ。あれは不可抗力でィ」
「意味が分からないよ」
「白い地球外生命体の真似すんな」
「よく分かったね」
「つか…」
「ん?、おわっ」
布団の中でお互い仰向けの体勢でいたら、総悟が言葉を区切ったすぐ後にあたしを胸元に抱き込むように引き寄せた。
暖かい体温に、ゆっくりな心音。胸板に耳を当てながら、そっと腕を回す。
「総悟?」
「…何でもねェ」
ぎゅーっと強く抱き締められ、息ができなくなる。背中を叩いて離すように合図を送っても、一向に緩む気配がない。
「…―――――」
総悟が何か言った。小さい声で、あたしに聞こえないように。
聞き返したいけど笑えないくらい強い力に息が出来なくて力が抜け始めた。それに気づいた総悟がすぐに腕の力を緩ませたおかげで気を失わなくてすんだけど、意味の分からない行動にイラッとして胸板を数回叩く。
「ごほっ!こ、殺す気!?」
「おもいっきり力入れたからねィ」
「え、何ホントに殺す気だったの?あたし何かした?」
「俺のハートはガラスでできてるから、オメーのツンケンした言葉で壊れちまうんでさァ。以後気を付けろィ」
「誰かハンマー持ってきてー1tハンマー持ってきてー」
「あっ、欠けた。俺のハートがまた欠けたー」
よく分からないけど、いつものやりとりに横向きに向かい合いながらクスクス笑って、そっと目を閉じた。
これだけ暖かいなら、まだ毛布がなくても平気かも。
「「おやすみ」」
この時総悟が何て言ったのか、あたしは後に知ることになる。