沖田双子妹
□迷子の迷子の子猫ちゃん
1ページ/3ページ
「なまえェ…あり?」
メロンとブルーハワイのかき氷を2つ持ってなまえが待っている場所へ向かえば、そこには違うヤツらがいて目当ての姿はなかった。
「…かき氷溶けちまうぞ」
どうすんだコレ、と周りに視線を走らせなまえを探すと、少し離れたところで座り込んでいた。
「何やってんでィ」
なまえの後ろに立って呆れたように言えば、
「おんなじ顔…」
なまえの影に隠れていた小せぇガキが、目をまん丸くして俺となまえを交互に見ていた。
「あ?何でィこのガキ」
「迷子みたいなの。ね、太郎くん」
「…僕、頼夜だよ」
「あり、ごめんね義経くん」
「それ弟でさァ。しかも本当の」
ガキの名前は頼夜っつーらしい。どっかで聞いたことあるような名前だったけど、生憎自分に関わること以外はどうでもいいので思い出せなかった。
なまえが言うには1人で泣きそうに歩いてたところを見つけて、俺が来るまで話を聞いていたみてーだ。
「迷子のお知らせでもしてもらうかね」
「じゃあ管理室行こっか」
「ありがとうお姉ちゃん!お兄ちゃん!」
さっきまではぐずついてたみてーだが、なまえに会ってからは一切泣いてねーらしい。親とはぐれたってのになかなか度胸が座ってんな。
管理室まで行く途中、頼夜に溶け気味だったメロンのかき氷を渡せば、初めて食べるらしく目がキラッキラしてた。かき氷食べたことねーとかこのガキ夏何してんでさァ。
んで俺はブルーハワイを食いながら歩いてる。
「総悟、一口ちょーだい」
「ん」
スプーンでざっくり取って開いた口に入れれば、量が多かったのか冷たそうに顔をしかめた。
「つ、冷た!けど美味し!頼夜はどう?」
「美味しいよ!僕こんな美味しいの初めて食べた」
「あはは、それはよかった」
しゃくしゃくと氷を混ぜ食べる笑顔の頼夜と暫く歩き、やっと管理室に着いた。なまえは中で説明してくると言い、1人で入っていった。
俺は頼夜とかき氷を食べながら、ぼんやりプールを見る。
あ、近藤さん焼きそば食ってる。俺もあとで買お。つか土方の野郎逆ナンされてやんの。ぷぷ、あんな化けモンみてーな面した女にされていい気味でさァ。あ、近藤さん泣きながら食ってる。
「お兄ちゃんはお姉ちゃんの恋人?」
そんなことを無表情で思ってたら、溶けきったかき氷のカップを持った頼夜が話しかけてきた。
「俺がアイツの恋人?ないないない」
「ホント?」
「ないないない。あんな貧乳ありえねー」
「ひんに…?でもお姉ちゃん可愛いよ」
「あー、なら俺も可愛いかィ?」
ぐいっと顔を寄せてよく見せてやる。俺となまえの顔はそっくりだ。多少男女特有の違いはあるが、目の色や鼻の高さとかパーツは一緒。
アイツが俺と同じヅラ付けて隊士に見分けさせたけど、完璧に見分けたのは近藤さんと土方コノヤローだけだった。
それくらい俺たちは似ている。
「えっと、お兄ちゃんはかっこいいよ!」
「なまえは可愛いんだろ?」
「うん。お兄ちゃんとお姉ちゃんそっくりだけど、お兄ちゃんはかっこいいよ!僕のいとこよりも!」
「へぇ、オメーいとこいんのか」
「年は離れてるけど、お城に行ったときは遊んでくれるんだ」
「……城?」
「総悟!頼夜!あ、いや頼夜様!」
なまえが慌てて管理室から飛び出してくる。今なまえが言い直したことで、このガキが何者なのかやっと分かった。
「オメー…源家のモンだったんだな」
どうりで肝が座ってるわけでィ。
なまえがかけた放送により、御付きだった野郎たちが駆けてきて頼夜に土下座を始めた。
俺となまえは少し離れたとこでその異様な光景(ガキに大の男が泣きながら頭を下げてる)を見て、源家について思い出していた。