卑怯な俺と恐がりな彼女-本編-
□始まり
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「須藤 ゆう君?」
「『たすく』です」
今迄数えきれない程、呼び間違えられてきた
すかさず訂正した俺に、名前を呼んだ総務課長が苦笑いしている
4月1日から入社する事前新入社員教育で、1週間前から出社した
1週間研修し1日の入社式が終わると、翌日からは各部署に配属され実際の業務が始まる
『入社前にみっちり勉強させるのか…』
総務課長の説明を聞きながら、1週間のスケジュールに目を通す
入社説明、書類手続き、会社の沿革、組織の説明
マナー教育、各部署の勉強会、教育資料…
内心では
『めんどくさ…』
そんな風に思っていた
大学四年でようやく就職活動を始めた俺は、当然周りにかなり遅れをとっていた
大手は既に一次募集が終わっていて、二次に何社も行ったが書類選考で全部落とされた
見兼ねた大学の就職窓口から
『中小企業ならまだ見込みがある』
そう言われ、手当たり次第に送った履歴書
最終選考迄残ったのは、地元のここだけだった