涙と笑顔のその傍に
□独占欲と我が儘―花井―
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付き合い始めて2ヶ月弱
今迄経験する事が無かった緩やかな日々
それは彼女が俺にくれた物
隣の彼女は瞬きもせず映画に見入っている
髪を梳くと、くすぐったかったのか肩を少しすくめ、俺をちらっと見る
そんな様子には構わず梳いていると、観念したのか映画にまた視線を移した
俺が初めて好きになった女
彼女を抱きたい
そう思うのは当然の事
だが俺は先に進める事が出来ない
こんなのあり得ない事態だが
紛れもなく俺は
彼女に手を出せなかった
……マジでありえないっしょ…
彼女が不思議そうに俺を見ている
無意識に声に出てたのかもしれない
「何でもない」
苦笑いで返すと
「疲れてる?仕事何かあった?」
心配そうな表情で尋ねてくる
今の俺自身の事、あり得ない
女を抱く事に我慢する事なんてなかった
でも今隣で
俺がこんな事考えているとは微塵も思ってない彼女には手を出せない