僕等の言葉

□「夢」
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私が死んでいてもぅ三年が経とうとしているのに仏壇の前でちゃんと毎日手を合わせてくれている彼方の夢を見た。
私はそんな彼方を片足をぶらぶらさせながら壁にもたれ嬉しそうに見ていた。
彼方がわざわざ日の当たるところに置いてくれた私の仏壇はその黒茶色で日の熱を吸収しいつも熱をおびていて温かかった。
私は彼方を毎朝玄関で見送り毎晩出迎えた。
それは今と変わらない幸せな日々だった。
そう、彼女が来るまでは。
ある日彼がある女性を家に連れてきた。凄い美人でどちらかというと私とは全く逆のタイプだった。
彼女は頻繁にうちに来るようになった。
ある日からはその女の人はうちに住むようになった。
私の部屋は彼女のものになった。
女の人と彼は楽しそうだった。いつも二人は笑っていた。
彼女の作る御飯を彼は美味しいと言って食べた。
それから家に子供が現れて、私の部屋は物置になった。
子供は小学校に行くようになった。
そのうち家が解体され新しい白い綺麗な家が出来た。
私の仏壇は西日の当たる部屋に移動された。
前のように温かな日は当たらずいつも寒かった。
気が付いてみれば彼は以前のように私に会いに来なくなっていた。手も合わせてはくれなくなっていた。
私は心臓から血を噴出してまた死んだ。
それでも私は生きていた。
私はただ何をする訳ではなく、ずーっと幸せそうな3人を見てるだけだった。
そう、そんな夢。

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