すーさいどちゃん!
□【GW?〜】出遅れた2
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「よし、準備は万端。後は決行日を…」
ムムム…と机に向かってすーちゃんは何やら思案している。
ギッギと動くたびに軋む音を立てているのは、この前作ったキャスター椅子だ。
GW中、すーちゃんの自殺行為は落ち着いていた。
休みだというのに黙々と机に向かっているか、外出しているかのどちらかがGW中の行動パターン。
宅配もよく届くようになった。
「よし子さん、しばらくうるさいです。」
「え、何――」
ガシャガシャガシャーン!!
すーちゃんはよし子に一言断ると、返事も待たずにうるさくし始めた。
外出や宅配で集めたものを開けたらしい。
またたくさんのパーツが散らばる。
「ああもう!」
よし子は一言文句を放って居間から退散した。
数時間後。
「…できた。」
ガシャンと何かを持ち上げるような音と共に、すーちゃんが声を上げた。
落ち着いた、静かな声。
いつもすーちゃんはクールに構えているから、はしゃいだりすることがないのはよし子も知っている。
ただ、その声はいつにも増して静かに、そして刃のように鋭く冷たかった。
「…すーちゃん?」
雰囲気が違うすーちゃんによし子がおそるおそる声をかけると、すーちゃんはガシャっと持っている物が音を立てるくらいにビクッと反応した。
我に返ったらしい。
ゆっくりと振り返ったすーちゃんが手にしていたのは…
「ああ、よし子さん。」
…ライフルだった。
カチャ、とまた音を立てるライフル。
黒い銃身は、まるで闇に溶けるカラスだ。
「あんた、なんでそんなものを!?」
「作りました。」
いつもの感じに戻ったすーちゃんは、ライフルを磨き始めた。
なんでライフルを自己生産できるのか。
もはやすーちゃんに出来ないことはない。
「銃なんて危ないじゃない!すぐに捨てなさい!!」
よし子が近寄ろうとすると、すーちゃんは恐ろしい顔でバッとライフルをよし子に向けた。
「…近寄らないでください。私は日本国民たちを疲弊から救うと決意したのです。」
すーちゃんは、自害こそしようとする子だったが、他人を傷つけることはしなかった。
それなのに、ライフルの銃口は今、よし子を捉えている。
「す、すーちゃん…やめ、なさい…」
よし子は後ずさりしながらすーちゃんをなだめる。
「はい、やめます。」
「やめんのかい!」
あっさりライフルを降ろすすーちゃん。
コロッとした顔で、またライフルを磨き始める。
「別に、よし子さんを殺そうだなんて思ってませんよ。」
段ボールをガサガサ漁ると、すーちゃんは実弾を取り出した。
連射が出来るアサルトライフル。
実に危険だ。こんなの、自力で作ったからって所持していれば銃刀法違反だ。
「捕まるわよ!?なんでそんなもの作ったのよ!」
「なんでって…休日を変えるために決まってるじゃないですか。」
「きゅ、休日を変える??」
まるで行動と目的に関連性が見つからない。
そもそも休日を変えるとはどういう事だろう。
「よし子さん、GWが明けたら次の祝日はいつか知ってますか?」
「え?」
すーちゃんはライフルを肩にかけると、カレンダーの前に立った。
そして、二枚めくる。
そこには第三月曜日が赤くなっている7月があった。
「GWが明けると、次は海の日まで休日はありません。」
「もしかして…」
よし子は何かを察した。
「そこで、」
ガシャっと、すーちゃんはライフルを構えた。
今度はよし子を狙っているわけではない。
「これを使って、五月下旬か六月のどこかで祝日を――」
「すーちゃん。」
「なんですかよし子さん。」
「それ以上はきっと言っちゃダメよ。なんていうか、不謹慎な気がしてきた。」
「やはりそう思いますか。私もこれ以上言うと世間からバッシング受けそうな気がしてきました」
「核心を言っちゃダメだわ。察せる人だけフフフって笑ってればそれでいいのよ。」
「なんだかんだ言って、みんな敬ってますしね。」
「…やめなさい。ネタバレするわよ。」
「すみません。」
かくして愛那はこのネタに社会的危機感を覚えたためにオチを濁す策をとったのだった…!
一年の中で、固定されない祝日があるのを私たちは知っている――
(移動する祝日とは何なのか、頭の体操をしながら不謹慎を全力で感じてください)