すーさいどちゃん!

□すーちゃんの本名
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「すーちゃんの本名って何?」

そういえば知らないのよね、とよし子は切り出した。

「『すーさいど』です。」

すーちゃんはよし子が作ったチャーハンをもそもそと食べながら言う。

「すーさいどは本名じゃないでしょ。そんな名前ないし。」

「じゃあ山田花子でいいです。」

「じゃあ!?じゃあって何!?」

「こんにちは、花子です。」

スプーンを置き、ドヤ顔のようにニヤリとするすーちゃん。
口元についているご飯がわざとらしい。

「もういいわよすーちゃんで。」

そもそも聞いたのが間違いだったとよし子は折れた。
このまま続けてもきっと平行線をたどる。
すーちゃんと同じ領域に立つのは難しい。

再びもそもそとチャーハンを食べていたすーちゃんだが、何を思ったか途中で手を止め重々しく語りだした。

「…そもそも私には名前というものがありませんでした。両親は私を橋のたもとに放置し死にました。
生活に困り、当然あてもなく、世界に絶望し、何度も自殺を図りましたがなかなか死ねません。
両親はあんなに早く死んだというのに…。
そんな時よし子さんに出会いました。身寄りのない私なのに、よし子さんはとてもよくしてくれます。
今日も食べ物と住まいを与えてくれました。ありがとうございます。」

ごちそうさまとスプーンを置くすーちゃん。
よし子は若干涙ぐんでいるようだ。

「すーちゃん、あんた――」
「っていう話だったらドラマチックですよね。」

さっきの雰囲気とは打って変わってケロリと表情を変えるすーちゃん。

「は…?今の作り話?」

「そうです。面白かったですか?」

「ええまあ作り話にしてはよく出来て…ってコラー!」

その日、すーちゃんは夕飯を抜かれましたとさ。

めでたしめでたし。


「児童虐待ですー」


・‥…TO BE CONTINUED!…‥・
 

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