〜GAME〜

□第三話『ターゲット』
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その目と言葉に迷いは無くて、いつもの天然キラキラ王子様のオー
ラも出ていない。
「一人じゃ危険だよ!僕も行く!」
要ちゃんが立ち上がり智久くんに言い寄った。その提案に智久くん
は少し戸惑った。
「私も行くよ」
ぎゅっと堅い握りこぶしをつくる。そうしていないと体が震えて、
怖いという感情が表に出てきてしまう気がする。
「よし、じゃあ俺らも行く。よな?」
一はそう言って、最後に由宇真の顔を覗き込んで問いかけた。由宇
真はこくっと頷く。
私たちは智久くんを先頭に実験室へ向かった。そこで目にしたもの
は暗くてよく見えないけど、人影は一つしかない。
人影が徐々にこちらを振り返る。
「にっ逃げよ!」
要ちゃんの言葉にキュッと廊下に音を響かせて踵を返し、全力で走
る。幸い、追ってきたもののどこかで見失ってしまったようで私た
ちは逃げ切ることができた。
「…逃げてきちゃったけど、みんな大丈夫かな…」
私はそう呟く。いつもなら誰かが返事をしてくれるのに何も返って
こない。
不安になって辺りを見渡す。私の周りには人っ子一人いない。
「由宇真…、一、要ちゃん、智久くん!」
返答がない。
まずい。はぐれてしまった。よりによって私は一人だけ。
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