短 編

□小悪魔ガール
1ページ/1ページ




掴まれながら連れてこられたのは薄暗い体育倉庫の中で向かい合う乱馬の顔は歪んで不機嫌そのもの。











魔ガール















「腕、痛い。」










怒った口調で訴えれば乱馬の事だからすぐに放してくれると思っていたけど一向に放してくれない手。

それどころか至近距離になる私達。










「だから手、痛いって。」

『そんなにきつくしてねぇだろーが。』











いつもとは違う声のトーンに少し積極的に見える態度。

こんな乱馬は初めてだ。











「ねぇ、乱馬…」

『さっきの本当かよ。』











顔色を変えない乱馬の言葉に驚きもしないで真っ直ぐ見つめる私に少し緩んだ笑み。











「じゃあ本当の事言えば良かった?」

『だからって良牙の名前出すかよ。』

「じゃあ誰なら良かったの?」

『…っ、それは…』











昼休みのガールズトークで聞かれたのは女子が好きな恋愛での定番な質問。

誤魔化す事は十分に可能だった。
けど何故か逃げたくなくて口にしたのは私の悪知恵。

それも彼だけに聞こえるようにはっきりと応えたんだ。











『とにかく次からは絶対言うなよな。』

「えー、嫌だ。」











変わらない至近距離。
余裕のない乱馬の表情。

いつもなら私がこの担当。
隠れて付き合って友達にも家族にも誰にも内緒で不安が募って乱馬に八つ当たりなんかして

それに彼の今ある立場と周りに女子が寄ってくるだけで深い深い嫉妬心が生まれる。











『はぁ⁈嫌ってなんだよ。』

「いーやーだー。」











こんなやり方だけどちょっとでも私の気持ちわかってほしかったんだよ。











『お前なぁ。』

「ずっと…」

『…え?』

「あたしの好きな人はずっと乱馬だよ。」











会えば会うほど愛しいから好きで好きで堪らないからだから不器用な私には似合わない乱馬への悪戯。

そしてそれを謝るようにした可愛らしい音が聞こえた触れるだけのキス。











「顔、赤くならなくなったね。」

『…うるせーよ。』











小さく笑う私に放課後の教室からずっと掴まれている腕を引かれれば乱馬から塞がれる唇。

こんな彼は私しか知らない。
愛が溢れるぐらい深い口付けして目を見てクスクス笑い合う私達は相当惹かれ合ってる。











「可愛いね、乱馬は。」

『はぁ?かわいかねーよ、俺は。』











だから誰にも教えてやんない。
私だけの秘密。









end.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ