黒猫と三毛猫(小説)

□◇4章 湯煙※
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「わー…」

「これは凄いな。」


刹那さんの車から降りて、目の前に広がる景色に俺と浩二は思わずそう呟いた。

白い砂利が敷き詰められた和を感じさせる道の横には小さな池があり、その上にはこれまた小さな橋が架かっている。

池の中には鯉がいて、なんとも優雅に泳いでいるのが見えた。


なんていうか…、源氏物語とかの昔の絵巻に描かれてそうな景色。





「ここから先は車は入れませんので、徒歩となります。また2日後にお迎えに上がりますので。」


「はい。忙しいのに、わざわざありがとうございました。」



旅館まで送ってくれた刹那さんにお礼を言って、黒塗りのベンツを見送る。


「浩ちゃんっ」

「わっ、」


「部屋に露天風呂付いてるらしいよ!一緒に入ろうねー」


「馬鹿!こんなとこで抱きつくなっ!」



何やらイチャついている(塚田が一方的に抱きついている?)2人を横目に、地面に置いていた自分の荷物を持とうとかがむが、


「あ…、」

「ほら、いくぞ。」


良平がひょい、と俺の荷物も持ってくれた。

…結構重いと思う荷物2つを涼しい顔して持ってるのは、同じ男としてちょっと複雑だけど…


俺は2人に声を掛けてから、良平を追いかける。


今日から3日間の旅行を考えて、俺は胸を躍らせた。






******


―2日前―


「…って事で、俺と浩ちゃんは晴れて恋人になりましたー!!」

ニコニコの顔で報告する塚田の隣で、若干うつむいて顔を赤くする浩二もコクリと頷く。

幸せそうな2人を見て、俺は安心感と嬉しさのあまり顔を綻ばせた。




あの制裁があってから1日経った今日、俺と良平は浩二達より早く学校に来て2人を待っていたが、はっきり言って不安で仕方がなかった。


きっと浩二の事だから、「俺のせいで…」とか考えると思う。


だから、特に気に病んだ様子もない浩二に、俺は本当に安心した。


制裁があった日、俺はちょっとこう…、良平に消毒という名の色々な事をされて立ち直ることが出来たけど、浩二は塚田のおかげで傷が癒えたのだろう。






「あ、もう1つ報告なんだけど、俺は今まで通り浩ちゃんって呼ぶことになったからよろしくねー」


「え、なんで?」


「んー、浩ちゃんって俺が名前で呼ぶと顔赤くなっちゃうんだけど、それが可愛くて可愛くて。俺の理性が危ないから、暴走防止のためにね。」


「あー…」


なるほど。


「佐久間もこれから大変だな。」


「ですよねー……って…」



誰?

つい「ですよねー」とか言っちゃったけど、突然聞こえた4人以外の声。


後ろを振り向くと…


「よぉ。」


…澤田だった。
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