novel

□結晶伝説 転5
2ページ/13ページ

AM6:52 アルカンタ教会図書室

スカイナは、世界三大魔女戦争について、資料を漁っていた。


必ずこのことは、呪いに繋がっていると信じて。



『事の起こりは聖歴4277年。世界三大魔女である、悪なる魔女が自らの力を注ぎこんだ、自動人形を造り出したことから始まった。
自動人形"タブー"は、7つの特性を持っていた。
それは………』


スカイナはその後に書かれた言葉に、目を疑った。


「これ…は…………」


スカイナが目を見張っていたその時、
ひたり…という足音がした。

慌てて周りを見渡す。



(誰もいない…?)

が、幽霊のような足音はまだ聞こえている。


スカイナが窓の外に目をやると、そこには、あの黒いドレスに黒っぽい茶髪の、あの女……………



悪なる魔女が、いた。



確かこの教会の構図的に、あっちは裏庭から山へと続いている。


(どこへ行くんだ…?)

疑問が体の中からせり上がる。


心臓は、ばくばくと太鼓のように鳴り続けていた。


だが今、魔女を尾行すれば、奴らの目的が明らかになるかもしれない……



迷いは、なかった。


スカイナは急いで図書室から出て剣を持つと、悪なる魔女の後を追った。



















AM7:12 アトラスの部屋


「ずべふっ!?」

アトラスは盛大にベッドから転げ落ちて、目を覚ました。


頭を床にごちんとぶつけ、
地面とキスをする。



当たり前だが、寝覚めは最悪だ。

頭を起こして、背を伸ばし、欠伸をひとつ。


「ふう…」

これでだいぶ落ち着いた。

寝ぼけ眼のまま、
ふらふらと洗面所に向かおうとすると…


慌てた様子の足音が、こちらに近づいてくる。



「ねえねえアトラス!!!」

そのまま、勢いよく扉が開き、アンディが顔を出した。

ガン、という擬音と一緒に、今度は扉に頭をぶつける。

頭がじーん…と痛んだ。


「あ、ごめん…大丈夫?」

「…大丈夫です」

本当は頭に床と扉を衝突させているから、痛みの二重奏が奏でられていたが、
それよりも、何故彼女が焦っているのか、が気になった。

「用件はなんですか?」

「スカイナ見なかった!!?」

アンディは早口にそう言った。


よくみれば息は切れ、肩での呼吸を繰り返している。


よほど焦っていたのだろう。

ただ事ではない。


「スカイナに…何があったんですか?」

「あの馬鹿、1人でどっかいっちゃったのよ!!
悪なる魔女が暗躍している、こんな時に………!!!」

アンディが自身の髪を鷲掴みにしてかき乱す。


アンディも同じだろうが、
嫌な予感がする。




急に、スカイナの寂しそうな笑顔が脳裏に映った。

「アトラス、他5人も起こして!!あいつを捜すわよ!!」

「はい!!!」


大変なことになった。

アトラスたちの、慌ただしい1日が始まった―――――…



















同時刻 教会裏の森

スカイナは、ただ悪なる魔女の後を追っていた。

ここも教会周辺だからか、
辺りには魔物がほとんど見当たらない。

魔女は森の奥へ、奥へと進んでいた。


進むにつれ緑の匂いは豊さを増し、草木に宿る木霊たちがくすくすと笑っている。



(とにかく進もう)

スカイナは、気配を殺しながら、とりあえず前へと歩みを進めていた。


しかし…………





30分前、アルカンタ教会最上階



『ファルカさん、貴方のホログラムを使い、裏の森にスカイナをおびき出すんですよ。
そうすれば正義感の強い彼のことだ、間違いなく追ってくるでしょう』

『なるほどねぇ……。
確かにいい案だわ』

『あとは、崖に道を作り出し、ホログラムをその上に歩かせてください。そうすれば……』

『スカイナ・フレデリカは崖から真っ逆様…ってことね』

『はい』




スカイナは、何も知らなかった。

これが、自身を殺すための、罠だと言うことに…………
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ