novel

□結晶伝説 承2
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7人は、教会専用の飛行船に乗って、アトラスの運命が変わった場所、フリードロゥ大陸に向かっていた。


ナージタとは反対側、大陸の東にあるのがミラージュの森。

その森は、フリードロゥ大陸の三分の一を占めるほどの広大な場所で、下手すれば遭難しかねない、森というよりは樹海だ。

だが、そこへ行けば、また無なる魔女に会えるかもしれない。

呪いの秘密が…わかるかもしれない。

もしアンディが反対していたとしても、行くつもりだった。


あの、神秘的な、どこか寂しそうな女性―――――…世界三大魔女の一人、バニラメルダ・クイーンに言われたのだ。

彼女は呪いのことを知っている。

だから、彼女の言うとおりにすれば、もしかしたら呪いを解く方法が見つかるかもしれない…そう思ったのだ。

ぼーっと、窓の外を見つめるアトラス。

空は見事なまでに蒼く、
所々白雲も混じって一面美しく染まっていた。

他のみんなは、と言うと
エリーゼとピノは楽しそうに話をしており、
スカイナは地図を何度も見直し、
エッドとルダールは飛行船内の女性警備員を口説き、
レイラはそのどれにも無関心なようで1人隅っこで武器の手入れをしていた。



真面目なレイラとスカイナは例外だが、他は全員呑気だ。

これから、危険な場所に行くというのに…


と、アトラスが思っていたその時だった。

ドガアァァ――――ン…


という爆音と共に、飛行船が大きく揺れて傾いた。

重力に逆らえず、床を滑り壁にぶつかる。


「え?何?何々!?」

状況を読めてないアトラスが、辺りをきょろきょろと見渡す。

「…まさか、魔物と衝突した?」

レイラが、神妙な面持ちでぼそりと呟いた。

ぐらぐらと、不安定に揺れ続ける飛行船。


そのままそれは、真っ逆さまに墜ちていった。

これが墜落すれば、全員無事では済まない。


しかし無情にも、飛行船は加速を続けながら急降下した。


悲鳴が船内を飛び交う。

もう駄目だ…と、全員がそう思っていた。
















「ん………」

気がついた時、そこは緑の匂いが広がっていた。

無事ではないが、森には到着したらしい。

アトラスはすぐに状況を把握し、がばっと起き上がる。

(みんなは?まさか………)

最悪の連想がアトラスの頭を猛スピードで駆け巡る。

「無事」

下から声がしたと思うと、
そこにはアトラスを睨みつけているレイラがいた。

周りを見渡すと、一応全員揃っており、気も確かなようだ。

「奇跡的に、森の中心にある湖に墜ちたのよ。
だから全員、無事」

レイラの一言に、アトラスはほっと胸を撫で下ろした。


「まぁ、ヒヤヒヤしたのも確かだけどね。
でも怪我人もいないし、運が良かったんだよ」

スカイナが苦笑いしながら話し掛ける。

アトラスが視線を湖に移してみると、確かに墜落した飛行船がぷかぷかと浮いていた。

7人以外の、操縦士や護衛騎士やシスターも無事らしい。

操縦士が立ち上がって人数確認をした後、7人にこう告げた。

「では、私達は飛行船修理及び援護連絡をしますので、ここからはあなた方7人で行動してください。
くれぐれも、無茶はしないで下さいね」

「わかりました」

スカイナが座ったまま真面目に返事をした。

その言葉を最後に、騎士たちは場を後にした。

エッドがふぅ、と息を吐く。

「しっかし、大変な目に遭ったよな、まったく」

「でも、みんな無事で良かったじゃない」

スカイナが首を半転させてエッドに言う。

ピノは相変わらず無邪気で、
ルダールなんかはあくびをしている。

ただ1人、レイラだけが眉を寄せて間に皺をつくっていた。

アトラスがそんなレイラに問いかける。


「…?どうしたの、レイ…」

「行きましょ」

彼女はアトラスの言葉を無視すると、先導をきって歩き出した。

それに続くようにして森へと消える6人。


アトラスは何か腑に落ちないものを抱えたまま、6人について行った。
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