novel
□結晶伝説 起2
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『少なくともレイラが帰ってくるまでは、部屋で待機』
というアンディの命を受け、
とりあえずはスカイナの部屋に4人はいた。
アトラスはぼんやりと窓の外を眺め、
エリーゼは大人しく部屋の隅に座り、
スカイナはただ広がる天空を見て、
そしてエッドはベッドに腰掛け、ずっと俯いている。
…かれこれ何分経っただろう。
朝一番で出発して、
少なくとも昼前には着いたのだから…まだ、夕方にはなってないはず。
すると、聞き覚えがある
あの少女の声がした。
『スカイナ?入るわよ』
それと同時に、あの"不老"の呪いを持った怪力少女――――レイラが、姿を現す。
「お帰り、レイラ…」
とスカイナが言い切る前に、
レイラは一枚の紙を差し出す。
「新たな任務よ」
そして彼女は、スカイナの部屋にずかずかと入りこんでいった。
初対面のエッドと目が合う。
「よう。初めましてだな。
君が、レイラちゃん?」
彼女は
「ええ」
とだけ言うと、エッドを無視して依頼内容をスカイナに話し始めた。
「今回の依頼、難易度は星3つ。場所はヘヅール海岸、及び周辺の街。内容は連続窃盗及び脱獄犯、ルダール・リンケッドの捕縛。
…この事でスカイナ、気になる事があるんだけど…」
「?…なんだ?」
レイラは、神妙な面持ちで話し始めた。
「彼が脱獄する時、必ずと言っていいほど巨大な魔獣の姿があるんだって。
偶然だと思う?」
スカイナは、一呼吸おいてから返答した。
「…思わない」
「同感ね。まさか囚人たちが呉越同舟してそんな魔物を出す訳ないし、第一、毎回毎回、彼が収監されていた部屋は必ず壊されていたの。まるで獣が去ったかのように…。
…ここからは私とアンディの推測なんだけど、
このルダールって言う男、多分…」
そして、レイラが衝撃の一言を言い放つ。
「私たちと同じ、呪いに罹った人間じゃないかしら?」
その場にはっきりと、衝撃が稲妻と化して走った。
何てことだ。
ここでまた、呪いに苛まれる人間と関われるなんて…。
アトラスの心臓は、
はっきりと波打って鼓動していた。
そして、頭をぶんぶんと振って考えを振り払う。
少しでも"嬉しい"と思ってしまった自分がいたからだ。
早く呪いを持った7人を集結させて、解きたいという、願望が………
「アトラスさん?」
気がつくとエリーゼが
自分の顔を心配そうに覗き込んでいる。
アンディとは違う、新緑の瞳が彼の姿を捉えていた。
「え?あ、はっ、何?」
わかりやすく動揺するアトラス。
それを見て、一気に空気が和んだ。
スカイナとエッドが声をあげて笑い出す。
レイラは、アトラスを白けた目で見ていた。
「動揺しすぎ。
何か考えていたのなら旗幟鮮明はっきり言いなさい」
さっきから彼女は難しい言葉を使っている。
馬鹿にしているのだろうか…?
エッドが小声で、
スカイナに尋ねる。
『なぁスカイナ、さっきからレイラちゃんが言ってる「ごえつどうしゅう」とか、「きしせんめい」とか、何なんだ?』
『「呉越同舟」は敵同士が共通の利害のために一時的に手を組むこと、「旗幟鮮明」は態度や主張がハッキリしていること。彼女、四字熟語マニアなんだ』
ここまで聞こえると言うことは、最早ひそひそ話のレベルではない。
「何か言った?」
それに気づいたのか、レイラが鋭い視線を2人に浴びせる。
まぁ、彼女よりか距離が離れている自分たちにも聞こえたのだから、反応するのは当然だが。
冷静としたキツい性格に
人を小馬鹿にする四字熟語マニア…
(なんか、これから波乱が起きそうだなぁ…)
アトラスは1人、苦笑していた。
「とにかく行くわよ。
彼が本当に私達と同じなのか、確かめに…」
レイラがそう言ったのを皮切りに、4人はヘヅール海岸へ向かって走り出した。