戯作

□紅葉狩り
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 陰陽師の朝は、意外と遅い。
 と言ってもそれは時間の制約と儲け心の無い者に限られているが。
 蘆屋道満は紙のざらりとした質感で目覚めた。
 ようやく手に入れた白楽天の詩集が曲がりきっていて、少し落ち込んでみる。
「お早う御座います、道満様」
 身の回りの世話をしてくれる式神―― 鵺(ぬえ)が煙のように現れ笑った。
「んー…」
「お客様がいらしてますが」
「客?」
促されて几帳をずらすと、小舎人姿の女が膳に向かっていた。
「斗和子様…」
「遅いですね。いつもこんな時間なのですか?」
「ええ、まあ」
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