戯作
□恋弔い
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恋をすると消えるから。
その人はそう言って、にっこりと、笑った。
壱
その日は町の祭りの日だった。
祭り囃子に誘われてふらふらと出て来た鬼頭晴耶は、人混みに流されて空腹だと言うのに何一つ買えないでいた。
元来人混みは苦手なのに一番人の集まる祭りに来ているのだから当然と言える。
少し人に酔っている事を自覚し、波を離れ近くの松に寄りかかる。
だが、顔に何かかかり、晴耶は上を向いた。
女が浮いていた。
「祭りにまで幽霊かい」
驚くと言うよりも呆れたと言う方が相応しい表情。