戯作

□OD´s
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三時五十二分。
喫茶店を出る。
携帯の留守電を確認すると実涯から着信があった。
歌を思い付く。
実生活に恋愛感情ぽいものを織り込めば良いのか、と光明を見い出す。
それはそうとして実涯に電話を掛け返した。
「もしもし実涯?俺だ。…はあ?ああ、解った」
電話を切る。


四時四十六分。
スーパー入口にて秋流、実涯合流。
「また派手にやられたな」
実涯の顔は喧嘩したのが一目で判る状態だった。
「惚れ直した?」
「無理するなよ」
昼間も同じ事を言った。
食材色々購入。


六時十八分。
「本屋に寄っても良い?」
「珍しいな」
秋流は新刊をパラパラと捲る。
実涯は大きくて薄い本を選び出す。
「生菓子教室?」
作れるのか、と秋流は半信半疑。
「これから勉強」
「そうか。なら楽しみに待つ事にする」
実涯の表情がぱあっと明るくなる。
千五百二十五円のお買い上げ。


七時三分。
マンション到着。


八時二十五分。
夕食。
鯵の干物、豆腐の味噌汁、モヤシのお浸し、めかぶ。のザ・和食。
「そうだ実涯」
「はい?」
「お前、誰かに恋した事あるか?」
「目の前にいらっしゃる黒髪美人にゾッコンですよ」
「…箸ぶっ刺されてぇか」
「恐いなあ。何なのいきなりその質問は?」
「次のテーマが恋歌なんだよ。ネタ探し」
「ああなるほど。でも俺、恋愛なんてしてる暇なかったし。ごめんね」
実涯はてへ、と笑った。


九時。
秋流入浴。
実涯皿洗い。


九時三十分。
実涯入浴。
秋流作歌。


九時四十分。
リビングに二人が揃う。
「実涯、包帯ほどけかけてる」
「え、どこ?」
「こっち来い。やってやるから」
秋流は慣れた手付きで包帯を巻く。
「いつもすみませんねぇ」
「わざとやってるだろ」
「バレてた?」
「当たり前だ」
「怪我すると成長止まるってホントかなあ?」
「お前、まだ伸びる気でいたのか」
「だって秋流に1センチ差で負けてるし。しかも4キロデブ」
「お前のは筋肉なんだろ」
終わり、と包帯を巻いた場所を秋流は叩いた。


午前零時。
「まだ寝ないの」
「もう少し。下の句が出ない」
「見て良い?」
訊くと秋流は作歌ノートを隠した。
「ケチ」
「俺の嫌がる事をするな。追い出されたくないなら」
「はぁい。お休みなさい」
実涯が寝室に引っ込んだのを見送って作歌活動を再開する。
幾ら女側からと言っても、実涯に仮託して作った恋歌なんて、絶対に見られたくない。
からかいのネタにされるに決まっているのだから。


今日も割りと平和でした。


ナチュラルホモ。むしろ実涯は秋流が大好きです。
作者としては実涯が攻めて秋流が受けるの希望。
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