戯作

□八百八町
2ページ/4ページ

鳳:今日和ー。鳳亭の亭主こと鳳真幸です。今日和は当て字だって知ってますけど使いたいお年頃。
市之助(以下市):どォも、市之助ッてもんで。
鳳:今日は市っちゃんに色々質問しようと思って来てもらいました。
市:市っちゃんって呼び方久々に聞いたなァ。
鳳:では早速。名前は?
市:さっきも名乗ったけど、市之助だって。
鳳:うんごめん、お約束だから。じゃあ次。性別。
市:見ての通り。
鳳:年は?
市:二十三。お前さんの時代の数え方だともうちっと若いかな?
鳳:外見的特徴…
市:己れが自分で言うのかィ?
鳳:それもそうだねぇ。手拭い手甲股引?
市:そりゃ身に着けてるもんだろ。
鳳:てへ。じゃ職業は?
市:天秤商。小間物の。
鳳:ご苦労様。家族構成なんか訊いて良い?
市:化け狸の豆太がいるな。両親は死んでて、兄弟は無し。
鳳:う…(何となく気まずい)。
市:ああ、悪い。反応しにくいよな死んだとか言われたら。気にしないで次行ってくれ。
鳳:じゃあ、お言葉に甘えて、出身地訊こっかな。
市:江戸。
鳳:明快だね。自分の思う自分の性格なんか言って下さい。
市:性格…お節介かね。
鳳:朗らかでもあるよ。
市:ありがと。
鳳:どう致しまして。ざくざく次いきますよー。座右の銘は?
市:ざゆうのめいってな何だい?
鳳:うーん、生きるための指針にしてる言葉かな。
市:それなら持っるな。「案ずるより産むが安し」
鳳:あー市っちゃんらしいわ。次。趣味。
市:趣味な…釣りかね。
鳳:へぇ、意外。
市:江戸前の海は魚介の宝庫だからな。銀宝、石鰈、真子鰈、鮎並、芝海老、渡り蟹、白鱚、鰻、そうそう浜を漁ると蛤なんかも採れる。葱と一緒に煮込んで飯に掛けて食うと美味い。
鳳:なるほど、そういう事ね。食費節約だ。
市:そういう事。
鳳:今じゃ考えられないよ。東京湾で採れた魚食べるなんて。
市:俺に言わせりゃ食える魚がいない海になっちまったって事の方が信じられねぇよ。
鳳:ごもっとも。気を取り直して、市っちゃんの得意なことって何?
市:節約。
鳳:江戸っ子なのに?
市:煩ェよ。
鳳:じゃあ逆に苦手なことは?
市:派手に遊ぶ事かね。
鳳:ああ、やっぱりって感じ。癖や口癖は?
市:癖は…指を鳴らす事で、口癖は「元気くらいは出さねぇと」辺りだと思う。
鳳:自分で思う自分の長所は?
市:打たれ強い。
鳳:では短所。
市:せこい?
鳳:自覚ありなんすか。
市:ありっす。
鳳:…んじゃ次。自分自身の中で気に入っているところを教えて。
市:前向きに生きられるところ。
鳳:良いねぇ前向き。格好いいね。では自分自身の中で気に入らないところは?
市:名前?なんで一じゃなくて市なんだ?
鳳:気に食わないんじゃなくてそれただの疑問では。まあ良いや。好きな食べ物は?
市:饅頭とか団子とか。
鳳:逆に嫌いな食べ物は?
市:ねぇな。
鳳:今迄で一番素晴らしい思い出って何?
市:難しい事訊くな…。生きてるって素晴らしいぞ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ