11/13の日記

01:03
嫌い、と言った瞬間の深い後悔
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うたプリ(蘭那)


美風に用事があって、訪れた楽屋

乗り気じゃなかったのもあって
ノックもそこそこ
返事を待たずにドアを開ける

「おい、美風」


俺がそれを後悔したのは
直後の事だった

「あ、蘭丸せんぱい
こんにちは〜」

間の抜けた声と
へにゃっとした笑顔で
俺を迎えやがったのは

四ノ宮那月だった

というか
四ノ宮だけ
だった

(ゲッ…)

内心で飛び出した
そんな声
きっと表情にも出ている

(畜生、マズッた…)

俺が焦るのは自然の反応だ
なにせ四ノ宮には
いい思い出が一つもない

何も知らず
手作りクッキーを食って
死に目を見て、以来

どういう訳か
コイツは俺に懐いてきて

事ある毎に
手作りのトンデモねぇ菓子を持ってきたり
ケーキバイキングに誘ってきたり
ファンシーなグッズを自慢してきたり
やかましく話しかけてきたり

とりあえず、いい思い出がない

ここで下手に絡まれたら
また何か
不利益を被ると察し
俺は半歩下がった

すぐ、出られるように

「おい四ノ宮
美風はどこ行った?」

「藍ちゃんなら、さっき
スタッフさんに呼ばれて…
ごめんなさい
行き先は聞いてないです…」

「そ、そうか!じゃあな!」

よし
美風を探すのは面倒だが
この場を離れる口実には丁度いい

確かな安堵と共に
踵を返そうとして

「あ」

四ノ宮が声を発したから
つい
振り返ってしまった

俺の馬鹿野郎
無視すりゃいいのに
なんで振り返っちまったんだ

「せっかくですから
ここで藍ちゃんを待ちませんか?
きっと
そう時間はかからないと思いますし」

名案!とばかり
キラキラと花を飛ばされたが
頷きたくはなかった

「いや、急いでr
「今お茶を用意しますから
ここに座って待っていて下さいね」

「聞けよ」

分かり切ってはいたが
四ノ宮は俺の言葉は聞かないまま
楽しそうに茶の用意を始めてしまった

…ここで無視して
無言で帰ったら
それはそれで
また
面倒なことになる気がする

「……はぁ」

数秒間の葛藤の末、諦めて
俺は示された場所に腰を下ろした

幸い
菓子は四ノ宮の手製ではなく
スタッフの用意したもののようだし
命の心配はないだろう

「はい、どうぞぉ」

茶を淹れたカップを二つ置いて
四ノ宮は俺の向かいに座った

「ひとりで寂しかったから
蘭丸せんぱいが来てくれて
すっごく嬉しいです」

そんな女々しいことを言いながら
本当に嬉しそうに微笑む

「そうかよ」

俺としては災難だがな

喉まで出かかって
さすがに呑みこんだ

「あ、そうだ!
見てほしいものがあるんです」

おもむろにバッグを漁り出した四ノ宮は
目的の物を探り当てると
パッと
俺にそれを見せつけてきた

「………」

携帯の待受画面
黄色いヒヨコが
右から左へ
ちょこちょこと歩いている

だから、どうした

反応に困って固まる

四ノ宮は逆に楽しそうに笑う

「このピヨちゃん
僕が描いたものなんです!
それを知りあいのスタッフさんが
待受に加工してくれたんですよぉ」

「って…お前が描いたのかよ」

そんな女子が好みそうな
ガキが描きそうな、ヒヨコを

いい年して
そんな図体して

ああ…
コイツは本当に未知の生物だ
俺には理解できない
理解したくもない

「先輩も待受にしますか?」

「しねぇよ!」

思わず語気が荒くなる
微か
しまった、と
思った時には手遅れ

四ノ宮はさっきまでの能天気は
どこへやら
しょんぼりと縮こまってしまった

「…そうですか……」

いや、うん…
言い方は悪かったかもしれないが
本当にいらねぇし…
つか
こんぐらいで凹むなよ…
面倒な奴だな…

呆れの溜息を漏らすと
ふい
視線が向けられて

「蘭丸せんぱいは
ピヨちゃん、嫌いですか…?」

それこそ、今更な問いかけをされた
今まで
何度も言ってきた筈なんだがな…

「嫌いだ、ロックじゃねぇし
大体、テメェ
男の癖に可愛い物好きってどうなんだ?
そういうキャラは結構、人選ぶぜ
少なくとも俺は無理だ」

「………」

「……て、おい?四ノ宮…?」

黙んな
しょげんな
俯くな

何度も言ってきたことだろうが
今ままでは全部
聞き流してやがったじゃねぇか
なんで
んな泣きそうな顔してんだよ、おい

「先輩は僕の事、嫌い…なんですね」

「は?」

「蘭丸せんぱいに嫌われるの
すごく、すごく…
悲しくて、つらいです…」

膝の上
ギュッと手を握り締め
唇を噛みしめる
今にも泣き出しそうな姿

…これは
全面的に俺が悪いのか?
なぁ、俺が悪いのか?

どうにも出来ず
あわあわしていると
次第に
四ノ宮の肩が震え始める

まずい、マジで泣かれる
それはマズイ

なにがマズイって
後輩を泣かせたとあっちゃ
周囲に何を言われるか
たまったもんじゃねぇ

「し、四ノ宮!!」

焦って
思い切り呼んだ名前

弾かれるよう
顔を上げた四ノ宮

その瞳は濡れている

「嫌いじゃねぇよ!」

とにかく必死
意味もないまま
ただ
叫んだ言葉

…ではあったが
あながち嘘でもない

「でも…」

ぐずって涙を拭う
その
あまりに幼い姿が
苛々と、心を締め付けて

俺は思わず立ち上がり
四ノ宮の側に寄った

髪を引っ掴んで
無理矢理
顔を上げさせて
目と目が合うように仕向けて

「お前が、嫌いな、訳じゃねぇ」

よく聞こえるよう
理解できるよう
単語で区切って
ハッキリと伝えてやる

そう

手作り料理も
可愛い物好きも
やかましいところも
俺は苦手だ
嫌いだ

だけどな、四ノ宮自身が
ガチで嫌いな訳じゃ、ねぇんだよ

「………」

俺の目を真っ直ぐ見つめ
ちゃんと
真意を読み取ったのか
四ノ宮の顔に
ほんの少し、穏やかさが戻った

「…らんまるせんぱぃ」

舌っ足らず
うう

唸った
次の瞬間

四ノ宮は両腕を広げ
勢いよく
俺に飛びついてきた

「よかった、よかったです…!」

「お、ま、苦しっ…」

あまりに勢いが良くて
受け止めきれず
俺達は床に倒れこんだ

背中がイテェ

だが
鼻をすすりながらも
笑顔になった四ノ宮を見て
まぁ、いいか

渋々妥協

甘えてくる
デッケェ身体が離れようとするまで
あやすように背中を撫でてやる

(本当、面倒なヤツ…)

大好きです
なんて
四ノ宮が
無邪気に言いのけるのを片耳に

溜息ひとつ

…とりあえず
こいつに
"嫌い"という言葉を使うのは
金輪際やめておこう、と

また一つ
俺は
無駄な知恵をつけたのだった…



::+::+::+::+::+::+::+::

ツンデレめ。


シリアスお題ヒャッフー!
していた筈なのに
出来上がってみれば
ギャグのようなエセシリアスのような
よくわからない何かになってました

よくあるよね!←

そして呼び方が不安で不安が不安でs
ゲームでも絡みあるのか
なかなか不安ですが
ちゃんと判明するんだろうか…

あと、本文中にある
「手作り菓子食って死に目を〜」の部分は
upてないSSの話だったりします(笑
そのうちupるかもしれません




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