11/10の日記

00:58
ふわふわなその髪に衝動が疼く
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うたプリ(藍那)



ふと、気がつくと
視線を奪われている

そんなモノがあった

周囲に殆ど興味を持たない
僕にしては
それは
珍しいことでもあって

なんの意味もないのだろう
この衝動が
どうにも、むず痒い

(あ、また動いた)

テーブルに頬杖をつきながら
じっと
視線で追いかける
ひとつの、モノ

ふわり
ふわり

持ち主が動くたび
風に煽られるたび

ふわり
ふわり

ミルクティー色した
髪が
ふわりふわり
躍るように
楽しげに揺れ動く

無機物に
"楽しげ"なんて
馬鹿げた喩えの仕方だけど
そう表現したくなったのだから
…仕方ない

「あれ?藍ちゃん?
僕の顔、なにかついてますか?」

視線を送りすぎたのか
持ち主…那月が
不思議そうに問いかけてきた

「別に」

正直に吐きだす気もなく
はぐらかす
けれど
反面
視線は嘘を付けないでいて

あたたかな色
やわらかそうなウェーブ

他人の髪の毛なんて
他人以上に
どうでもいいこと

筈なのに

目が離せない
追いかけたくなる

「…藍ちゃん?」

腑に落ちないのか
なにかを心配してなのか
那月が
おずおずと近寄り
僕と視線を合わせるように屈んだ

近付いた、揺らめき

ふわり
ふわりと

僕の手が届く場所で
羽根のように踊る

ふわり
手を伸ばせば
指先にくしゃり絡んだ
常温の絹

(…思ったより、普通)

勝手に何を期待していたのか
そんな感想を秘めながら

撫でおろせば
ふわり
感触がくすぐったい

「ふふ、嬉しいな
藍ちゃん
僕のこと撫でてくれるの?」

「そういう心算じゃないよ」

じゃあ
どういうつもり?

訊かれるのは億劫で

紡がれる前に
ぴん

旋毛の束を引っ張った

「い、痛いです…」

小さく歪んだ表情が
なぜだか気を良くさせる

「那月、もっと髪をケアしたほうがいいよ
こことか…
ほら、毛先が傷んでる」

「あ、本当ですねぇ
気をつけます」

探る素振りで
好き勝手に蹂躙
乱す髪

ふわりふわり
僕より柔らかい
けれど
特筆するべき要素もない

つまらない
と思いながらも
なかなか止まらない
指先

ぐしゃぐしゃになっていく髪は無惨で
僕なら、速攻で払い除ける
だろうけど
何故か那月は笑っていた

「…なに、笑ってるの」

「藍ちゃんの指
優しくて気持ちいいんです」

そう言って
傾けば
同時に揺れた髪、ふわり

ちくり、刺激される衝動は淡く

いたって普通
なんてことのない
髪だと

触れて気付いた
筈なのに

(なんで、あったかく感じるの
もっと
触れていたくなるの…)

くしゃり
掴み
引きよせた、その感触

腕の中に閉じ込め
頂点にキスを落として

すん
酸素に混じって香る
シャンプーの匂いを満たして

ああ
やっぱり
なんてことない

それなのに
こんなに
僕の心を惹きつける
視線を奪って、止まない

その理由は…なに?

苦虫を噛んだ気持ちで
強く抱える頭

されるがまま
那月は
嬉しそうにしている

訳がわからない

「藍ちゃん
僕もギュッてしていいですか?」

「…駄目、だってば」

僕の言葉を無視して
那月は勝手に腕を回して
抱きついてきた

「もっとギュッてしていいですよぉ」

別に抱き締めたかった訳じゃない

内心で呟いて

なら、なぜ抱き締めたのか
自問に至る

(那月以上に自分のことがわからない…)

顔を埋めた髪のクッション
目を閉じて浸れば
浮かんだのは

揺れる髪と、ふわり、笑顔

髪を眺めれば
自然
目に入る
那月の、笑顔

いつだって
向けられていた

あたたかで
やわらかな
笑顔

(…ああ、まさか)

僕が追いかけ止まないものは
止まないと思っていたものは

髪ではなくて
髪だけではなくて

那月自身?

だとして
それはつまり

(僕にはない色
僕にはない、あたたかさ
僕には出来ない、笑顔)

ないものねだり
欲しがりということ?

(冗談じゃない…)

埋もれた感触
腕の中
閉じ込めている髪を
不愉快に愛して

小さく溜息

ふわり
ふわり

気付いてしまった
本当に惹かれた
もの

ふわり
ふわり

風に踊れる軽やかな
自由で鮮やかな心

不可侵の感触

それを抱き締めて
捕えたい
なんて

むず痒かった衝動の答え
知ったところで

僕は呆れ
想いごと遠くへ投げ捨てた…


::+::+::+::+::

キャラ崩壊その2。
そんな藍ちゃん可愛いなおい。



本当はギャグ全開キャラ崩壊MAX!
な予定だった…んですが
書いてみたらビックリ
えせシリアス風味でしたとさ

おかしいな!←



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