10/04の日記

00:15
小悪魔リップ、天使のアイズ
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うたプリ(音那)


朝陽がどんなに眩しくとも
吐いた息は白く煙る、この季節

身を震わす寒さから
一刻も早く抜け出そうと
俺は
暖房のかかった
教室へと飛び込む

「おっはよ〜」

ふわり
身体を包む温もり

「ふふ、おはようございます」

「おはよう
お前は朝から元気がいいな…」

先に登校していた
那月とマサが
俺に気付いて
挨拶を返してくれる

バタバタと
自分の机にバッグを置いて
話しをしていたらしい
二人の側に行った

「俺は元気が取柄だからね」

へへん、と笑うと
マサは呆れたように溜息
那月は納得するように微笑んで…

…ん?

「あれ?那月
唇、なにか塗ってる?」

笑んだ時
キラリと艶めいた唇
ああ
やっぱり
なんだかキラキラして
少しピンクっぽい

「乾燥して切ってしまいそうだったので
リップを塗ってみたんですよぉ」

「リップ?」

え?
でもリップって
こんなキラキラするっけ?

俺が疑問符を飛ばすと
なぜだか
マサが変な顔になった

「それは神宮寺がな…」

「レン?」

リップの話に
なんでレンの名前が出てくるんだ?

余計に分からなくなって
疑問符が飛びまくる

俺が首を傾げると
那月が
なんだか嬉しそうに微笑んだ

またキラッてした

「ふふ
昨日、レン君に素敵なリップを
教えてもらったんです」

そう言って那月は
ポケットから
可愛らしいリップを出して
俺に説明してくれた

「このリップは
保湿効果があるだけじゃなくて
香りと色がつくタイプなんですよぉ
しかも
と〜っても
可愛いデザインなんですよね」

「うん、可愛いね」

可愛い…けど
それって
女の子向けに売ってる
リップなんじゃないかなぁ…

……と

嬉しそうな那月には
言わない方がいいんだろうなぁ…

少しだけ引きつって笑うと
マサが
こっそり
俺にだけ聞こえるように呟いた

「神宮寺の奴が
女子から聞いたソレを
四ノ宮にすすめたのだ」

ああ
なるほど…

それで
可愛いもの好きの那月が
見事に食いついちゃったのか…

「でも口紅じゃなくてリップなんだよね?
そういうのもあるんだ」

確かに
それほど発色はないし
こうして近くに寄らないと
キラキラも目立たない



思いながらも
不思議で
面白くて
つい視線が
那月の唇に向いてしまう

那月が喋るたび
微笑むたび
キラって、する

「色も綺麗なんですけど
匂いもとってもいいんですよ」

「へぇ〜」

心半分で
なんとなく打った
相槌

「嗅いでみますか?」

キラってする
唇だけ
じ〜っと見ていたら

いたら

「うわっ!?」

急に
距離が
近くなった

「ほら、いい匂いでしょう?」

触れそうな距離に
那月の顔が…
く、唇が…

「!!!!」

慌てて飛びのけようと
したんだけど
出来ない

俺の首には
那月の手が回されていて
しっかり、がっしり
固定されていた

「あ、あの、な、那月…
ち、ちか…」

「え?もっと近くないと
分からないですか?」

「!!!!」

俺の意志とは
反対に受け取られた言葉
に従って
さっきよりも
更に距離が近付く

ふ、触れる…!
ちょっとでも動いたら触れる…!!

「…音也くん…?」

不思議そうな那月が
すっごい
近くから
俺の目を覗き込んでくる

あまりに穏やかで
一切
他意のない優しい瞳

なのに、唇は
キラリと艶めいていて

匂いも
那月らしくない
なんだか
甘くてクラクラする匂いで

「な、つき…」

…あ、どうしよう
すっごい…
ドキドキしてきた…

そんな状況じゃなくて
那月はそんなつもりじゃなくて

分かってるのに

やわらかな瞳に
俺だけが映ってる
それが
見えてしまうから

俺の吐息が
那月の唇にかかってる
それが
感じ取れてしまうから

どうしても
たまらなくなって

「あれ?音也くん…、真っ赤…?」

「!」

キラって…!
ふわって…!

こ、こうなったら
いっそ…!
いっそのこと…!!!!

(もう駄目っ…!)

俺は
意を決し



…しまいそうになった時


「し、四ノ宮!
匂いならば
リップ本体を嗅いだ方が
分かりやすいのではないか!?」

「あ、それもそうですね」


パッと首が解放され
互いの距離が
離れた

「……あ…」

無意識に漏れた声は
なんだか寂しげ



俺は
一気に
現実に帰る

「あ、あ、危なかったああああ!」

「本当にな…」

マサが俺の肩を叩き
深く溜息を吐く

「てか、もっと早く助けてくれよ!」

「…い、いや
動揺して少々固まってしまってな…
遅れてすまなかった…」

「あれあれ?
二人とも顔が真っ赤ですねぇ
どうしたんですか?」

俺達の動揺など知らぬ様子で
那月が小首を傾げる

心配に揺れる瞳

艶めく、唇

ドキッてなる
俺とマサ

「…那月、そのリップ使用禁止」

「え!」

「俺も一十木の意見に賛成だ
いくらリップとは言え
色がついてしまうのはどうかとな」

「…そうですか…」

那月は
途端
残念そうに俯いた

ごめん
ごめん…!

だけど

このドキドキ
止まらなくなる前に
止めないとヤバいから…!

「…ふぅ、これで安心だな」

「ああ…
一時はどうなるかと思ったが」

落ち込む那月を背に
こそこそ
肩を組む俺とマサ

匂いだけでも、と
渡された
リップには

『男もイチコロ!?小悪魔リップ♪』

なる
説明が
隅っこの方に
小さく
書かれて
いて

「「危なかった」」

俺達は改めて
今回の件の恐ろしさを

そして

回避できた奇跡を
噛みしめたのだった…




::+::+::+::+::+::

魅惑の瞳。
魅惑の唇。
カッ!


リップが必須の季節ですね
という訳でリップネタ

世の中にはいろんな商品があるので
こういうキャッチなものも
…ありそうですね(笑

↓この後のオチ↓

リップ勿体ないから
学校行く時はつけないけど
寮の自室で使おう!

翔「お、おまっ…!!!」


どこまでもギャグですよ?


.

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