神尾受けV
□真っ先に来いよ
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「跡部、手塚、今日は部員たちの相手してくれて、ありがとうな」
「いや、俺もいい練習になった」
「あぁ、礼には及ばねえよ」
不動峰での練習がようやく終わった。
部員全員と相手をしたが、まあ大したことねえな。
橘と手塚、白石に軽く挨拶をし、俺は校門に向かって歩き出す。
本当はこれから手塚たちと一戦交えたいところだが、神尾が風邪をひいているなんて聞いたらじっとしてはいられない。
金色はあれからすぐに戻ってきたから、本当に神尾の家に行ったりはしていないだろう…たぶん。
「跡部さん…神尾のところに行くんですか?」
「あ?伊武…てめえには関係ねえだろ」
「ふぅん…まあ行くなら勝手に行けばいいけど、風邪を悪化させるようなことはしないでくださいよ。明日の練習に支障が出ては困りますから」
「わかってる」
話が終わると伊武は携帯を取り出して電話をかけ始めた。
どうせ神尾に何か言うつもりだろうが、関係ねえ。
恋人が風邪で苦しんでるんだ。行かないわけにはいかねえだろう。
俺は校門を出て、神尾の家まで小走りで向かった。
神尾の家に着き、インターフォンを鳴らした。
少しして、神尾のお母様が扉を開けてくださった。
神尾家には何度もお邪魔しているから、ご家族とも顔なじみだ。
将来お義母様になるんだからな、失礼があってはいけない。
俺は普段は見せないような笑みを浮かべ、丁寧に挨拶をかわし、家に入れてもらった。
後から茶菓子を持ってきてくださると言うお母様に丁重にお断りをし、神尾の部屋のドアをノックした。
「神尾、俺様だ。入るぞ」
部屋の中からは小さな呻き声が聞こえた。
だいぶ苦しそうだが、起きてはいるようだ。
ドアを開けると、寝間着姿の神尾がベッドに転がっていた。
神尾は俺の姿を見るとゆっくりと身体を起こした。
「無理すんな。寝てろよ」
「ん…大丈夫……」
神尾の顔は赤くて、肌には汗が滲んでいる。
やはり熱があるみたいだ。
「ったく、風邪ひいたなら言えよ。すぐに飛んできてやるぜ」
「いいよそんなの…跡部今日うちの部活行ってきたんだろ」
「あぁ、そうだが…何怒ってんだ?」
神尾は見るからに機嫌が悪い。
熱の所為だけではないように思える。
身体を寝させようとしない神尾の隣に腰掛けて、背中を支えてやる。