神尾受けV

俺様バースデー
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コールが止んで、跡部の声がした。


「あ、跡部?」

『ああ、どうしたんだよ。こんな時間に?』

「あ、のさ……」


さっきまで何度も何度も頭の中でシミュレーションしたのに、言葉が出てこない。

恥ずかしさと緊張で、口がうまく動かなくて。


「っ…た、誕生日、おめでとう、跡部!」



でも、やっぱり言わなければいけないから。

死ぬほど、勇気振り絞って言った。

電話の向こうから、跡部が喉を鳴らして笑う声が聞こえる。


『ククッ…よく言えました』

「ばっ、バカにしてんのか!?」

『違ぇって。ありがとな、神尾』

「う、ん……」


跡部が笑っているのが目に浮かぶ。

俺はますます恥ずかしくなり、電話だというのに俯いてしまった。


「明日…いや、今日?そっち行ってもいいんだよな?」

『ああ、わざわざ悪いな』

「いつも跡部が迎えに来てくれるし、今日くらいいいよ」

『そうか。それじゃあ、待ってるからな』

「うん。じゃあまたな跡部」

『ああ。おやすみ』


電話を切るのが少し寂しくて、なかなか携帯を耳から離せない。


「ん…おやすみ…跡部」

『アーン?』

「…誕生日、おめでと」

『それはさっき聞いたぜ?』

「いんだよ。何回でも言いたいんだから」


本当は会って直接言いたいんだけどな。


『そうかよ。ありがとな。明日、楽しみにしてるぜ?』

「お、おう!覚悟しとけよ!」

『はいはい。じゃあな、お子様は早く寝ろよ?』

「う、うるせーバカ!」


こんなやり取りが楽しくて、このまま眠らずに、朝までずっと話していたいと思ったり。

さすがにそんなことはできないから、俺は大人しく電話を切った。



跡部に会いにいくのは放課後。


あぁ、待ちきれないぜ。




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