神尾受けV

君の涙
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「神尾さん…初めてじゃないでしょ…?」

「えっ…」

「すごい締めてくるし、後ろでこんなに感じるなんて…やらしい人」

「っや!あ、ぁ!」


俺は別に何も言ってないのに、勝手に貼られたレッテル。

取り消すことは、できそうもない。


だって事実だから。仕方ない。


越前に抱かれるのが、苦痛になった。

気持ちよくないわけじゃない。痛くもない。

ただ、越前の口と、俺の耳を塞いでやりたくなるだけ。



「っは…気持ちいいよ、さすがだね神尾さん…ここ、何人咥え込んできたの?」


耳が痛い。

普段は凄く優しいのに、情事のときは胸に刺さる言葉ばかり。

きっとそれは、越前なりの独占欲。

俺を蔑ろにしてるとか、罪悪感を浴びせようとしてるわけじゃない。


だから、俺は何も言わない。

帰って、1人で泣くだけだ。





去年、俺たち不動峰はテニスができる状況じゃなかった。

ずっと、先輩たちのオモチャにされてた。


俺は…俺と深司は、よく先輩たちにマワされた。

時には2人一緒だったり、1人で全員相手にしたり。

どっちにしろ辛かった、けど。


このことは俺と深司と、橘さんと先輩たちしか知らない。

チームメイトに言おうと思ったけど、口を挟んで巻き込んでしまうのが嫌だった。

皆、そういう奴だから。


橘さんが来てから、勿論そういうことはなくなったけど、忘れることができるはずもなく。

深司は橘さんと付き合ってて、悩んだ末にそのことを打ち明けた。

ちゃんと理解して、優しく話を聞いてくれたって、深司は言ってた。

勇気もいるけど、言ってよかったって。


俺も、何度も言い出そうか迷った。

けど、やっぱり勇気が出なかった。


毎回毎回、越前に抱かれるたびに自己嫌悪に陥る。

俺が悪いわけじゃないってわかってるけど、汚れた体を触らせてるって思うと、たまらなくなる。


俺はずっとこんな風に抱えていかなきゃいけないのかな。

大事な恋人にすら言えないまま、ずっと…




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