四天宝寺U
□Genius
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負けた連中が戻ってくるなんて、思ってもみぃへんかった。
謙也や小春や金ちゃんが戻って来たって聞いて、俺は嬉しくて飛び上がりそうやったんや。
だけど、皆の顔ぶれを見て、1番最初に飛び込んで来たのは、財前の顔だった。
「財前、お前、やっぱり来てくれたんやな」
「んー、まあ、その…成り行きで……」
練習が終わって、コートの裏に財前を呼びつけた。
嬉しさのあまり抱きつきたくなるのを懸命に抑える。
「俺に会いたくて来てくれたん?」
「アホちゃいますか?んなわけないでしょ」
「ですよねー…」
まあそんなことは言われんでもわかっとる。
大方、ユウジにつれてこられたんやろ。
でも、こうして財前に会えたのは事実なわけで。
何ヶ月も離れる覚悟をしていたから、素直に嬉しい。
「どうせ来るんやったら何ですぐ合宿所の方に来んかったん?」
「いや、なんか…歩いてたら遭遇したっちゅーか…俺も、部長おるかと思ったのにおらんし、びっくりしましたわ」
「まあ、俺もあんな山ん中で特訓しとったなんてびっくりや」
財前の顔や体を見る。
傷だらけや…
心なしか、たくましくなったような気もする。
「でも、部長があっちやなくてよかったっす」
「何で?」
「部長の綺麗な体に傷がつかんくて」
「えっ」
財前が意地の悪い顔で俺を見上げてくる。
俺は、この顔に弱い。
「な、何アホなこと言っとるん。年上をからかうもんやないで」
「からかってんかないっすよ。本心っすわ」
そう言って、財前は俺の肩に手を添えた。
精一杯背伸びをして、顔を近づけてくる。
「唇やってこんなに綺麗やし…」
すぐに唇を奪われた。
こんな外で、暗くなってきとるけど、誰が来るかわからんのに。
でも、抵抗することができない。
大人しくしていると、唇を割って舌が入ってきた。
俺はそれを受け入れる。
「ん…ッ、は…んん、」
久しぶりや。本当に久しぶりのキス。
俺らは夢中になって口づけをかわした。