四天宝寺U
□キングとバイブル
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「久しぶりやなあ、跡部クン」
東京駅に着くと、相変わらずかっこええ跡部クンがお出迎えしてくれとった。
跡部は俺を見るなり微笑んだ。
冷静を決め込んどるけど、俺には分かるで。
あの笑顔は俺に会えて嬉しくてしゃーないけど公共の場やし恥ずかしいからめっちゃニヤけんの我慢してます、って顔やな。
エクスタシー!
「何ニヤけてんだ白石。俺様に会えて嬉しいのはわかるが、公共の場だぞ。そのいやらしい笑顔はしまえ」
「ハイ…」
怒られてもうた。
やって、嬉しいのは俺も同じやしな。
「まったく、わざわざ新幹線なんて乗らなくても、俺が迎えに行ってやったんだぜ?」
「往復させるの申し訳ないやん。気にせんでええんやで」
「お前がいいならいいんだけどよ」
あぁもう今すぐ跡部クンに抱きつきたい。
Uー17の合宿で会ったのが最後なんや。
ええ加減寂しくて死ぬかと思ったわ。
いくら毎日メールしとるっていってもな。
「じゃあ俺様の家に行くぞ」
「え?もう家行くん?」
「ったりめーだろ。どれだけご無沙汰だと思ってんだ」
あぁ、なるほどね。
つまり、溜まってますと。
俺を抱きたいと。
なんちゅー男前や跡部クン!
エクスタシーや!
「あぁ、でもな。どうせ泊まってくんやから、せっかく東京来たんやし昼間は観光でもしたいなー、なんて…」
言うと跡部クンは鋭い目つきで俺を見た。
視線だけで殺されそうや。
いや観光したいんもホンマやけどな。
ぶっちゃけいきなりそないな展開になると思ってへんかったから、心の準備が全くできてへんのや。
あぁ、俺ってばヘタレ。
「…アカン?」
「いや、いいんじゃねぇの?俺様が直々にエスコートしてやるんだ。ありがたく思えよ」
「はーい。おおきに」
俺は颯爽と歩く跡部クンの後ろを、ガラガラとキャリーケースを引きながらついていった。