四天宝寺U

医者の不養生
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うぅ…何やこれ、天井がぐるぐる回っとる。

体ん中は熱いのに、寒気が治まらん。


「うぅー…俺はもう死ぬんやあぁー」

「何アホなこと言うてるんすか」


べしっと頭をはたかれる。

俺の顔を覗き込む財前が眉間に皺を寄せる。


「謙也さんいきなり倒れるから、俺がここまで運んできたったんですよ。結構大変やったんですから」


あぁ、そうやん。

俺さっきまでリビングにおったはずやのに、視界に入る天井は寝室や。


あー…段々意識はっきりしてきたわ。

昨日の夜から頭痛くて、頑張って出勤しようとしたら倒れてもうたんや。


「まったく、医者が風邪ひくなんてほんまありえへん。二度と謙也さんに診てもらいたくないわ」

「医者だって風邪くらいひくわー。毎日風邪菌うようよしとるとこで働いとるんやでー」

「やったらしっかり免疫つけてください。誰かさんが専業主婦やってくれてうるさいから、アンタが倒れたら収入ないんすよ」

「はーい…すんまへーん……」


いつも以上に口悪いな…

まぁでも、財前の言っとることは正しいし。


「病院には電話入れときましたから。代わりの人おるみたいやし、よかったですね」

「おぉ…」


いつかは自分で診療所やりたいと思っとったけど、こんな風に倒れてまうようじゃあかんなぁ…

皆にも迷惑かけてまうし、申し訳ないわぁ。


「で?どんな調子なん?さっき熱測ったら38.4℃もありましたけど」

「マジか…そら辛いっちゅー話や…喉と鼻は大丈夫やけど、頭痛くてかなわんわ…」

「さいですか。まぁ頑張ってください」


そう言って立ち上がる財前。

え?ちょちょちょちょちょ…


「ざ、財前、どこ行くん?」

「掃除です。アンタの所為で途中なんですわ」

「ちょ、ちょお待ってや…」


俺は手を伸ばして財前のズボンの裾をつかんだ。

つかんだ、っちゅーか、触った、って感じやけど。


「何すか?」

「おま…旦那が苦しんどるっちゅーのに、1人にするんか…」

「や、でも掃除…」

「昨日もやったやろ…1日くらい大丈夫やて。やから…そばにおってや」


そう言うと、財前は小さく溜息を吐いて座りなおした。



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