四天宝寺U
□熱があるので
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「財前光様ー」
名前を呼ばれて、フラフラとソファーから立ち上がる。
途中で壁に頭ぶつけて恥ずかしかったけど、正直意識が朦朧としてそれどころじゃない。
病院に来るときも危なかった。
1回信号待ちのときに額でクラクションを押してもうた。
昨夜から少し調子は悪かったけど、まさかこれほどになるとは。
謙也さんを送り出して、掃除でもしようかと思ったら視界が回った。
あぁ、コレはヤバいと直感が告げる。
で、今は謙也さんの病院。
診察室に入ると、白衣に身を包んだ謙也さんがおった。
「光、お前大丈夫か?びっくりしたで」
「大丈夫やないからわざわざ謙也さんの病院来とるんすよ」
「まぁ、せやなぁ。熱はあったん?」
「38.2℃」
「お前平熱低いもんなぁ。そら大変や」
謙也さんは俺の額に手を当ててそう言った。
「他に何か症状出とる?」
「頭痛いっす…フラフラするし」
「う〜ん…風邪や思うけどな、とりあえず診察してみるわ」
「ん……」
謙也さんが聴診器を手にしたから、俺は自ら上着を捲った。
謙也さんの手が止まる。
「…謙也さん?」
「お前、エロいわ」
「は?」
「乳首丸出しにして誘っとるん?」
後ろにいる看護師さんに聞こえんよう、小声で言う謙也さん。
俺は少し恥ずかしくなって、服を戻す。
「謙也さん…患者が服捲るたびにそないなこと考えてはるんですか…?」
「なっ、なわけないやろ!光だからや!」
「…そんならええねん」