氷帝U
□俺だけに見せて
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机の上に置いてあった携帯から、着信音が流れる。
この音、日吉からだ…何だろう、珍しいな。
驚き半分、嬉しさ半分で通話ボタンを押した。
少し間が空いて、遠慮がちに聞こえてくる愛しい恋人の声。
『あ、あの、向日さん……』
「ん?どうした?お前から電話してくるなんて珍しいじゃねーか」
『あの…とても言いにくいんですけど……』
「何だよ?言えよ」
いつも余計なことまでズバズバ言うくせに、今日はどうしたんだ?
『…俺、今ものすごく困ってるんです。相談に乗ってくれませんか?』
「えぇっ!?」
『あ、い、嫌でしたらいいんです。すみませんでした』
「ちっ、違う違う!ビビッただけ!嫌じゃねぇし!」
咄嗟に出た声の所為で嫌がってると思われちまったけど、仕方ねぇだろ。
日吉が、あの日吉が、あのナマイキで可愛くない、いや可愛いけど、とにかくあの日吉が俺に相談したいなんて。
「どうしたんだよ?お前が俺に頼むなんて、よっぽどのことがあったんだな?」
『はい……今から向日さんの家に行ってもいいですか?』
「えぇええ!?」
『ダメですか…?』
「いっ、いやっ、ダメじゃないダメじゃない!」
今度は家に来たいだと!?
しかも、今日は金曜日。つまり、明日は土曜日。
つまり、休み。
つまり、つまり、お泊り!?
俺は今までにないくらいの衝撃を受けた。
だって日吉から、日吉から泊まりたいだなんて!
あ、まだ泊まるとは言ってないか。でも、家に来たいなんて!
『じゃあ、今から行きます』
「いいけど、電話じゃダメなのか?電話でも相談くらい乗ってやるぜ?」
『…たぶん、会わないと俺の置かれている状況は理解できないと思うので』
「…ふーん?ま、いいや。待ってるからな。もう外暗いし、気をつけて来いよ」
『はい、ありがとうございます』
そういう素直な声が聞こえて、電話は切られた。
…ちょ、今からムラムラしてきたんだけど、どうしよう。
日吉は真剣に悩んでるっぽかったのに、不謹慎すぎるだろ俺ぇぇぇ!