氷帝U

俺だけに見せて
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机の上に置いてあった携帯から、着信音が流れる。

この音、日吉からだ…何だろう、珍しいな。


驚き半分、嬉しさ半分で通話ボタンを押した。

少し間が空いて、遠慮がちに聞こえてくる愛しい恋人の声。


『あ、あの、向日さん……』

「ん?どうした?お前から電話してくるなんて珍しいじゃねーか」

『あの…とても言いにくいんですけど……』

「何だよ?言えよ」


いつも余計なことまでズバズバ言うくせに、今日はどうしたんだ?


『…俺、今ものすごく困ってるんです。相談に乗ってくれませんか?』

「えぇっ!?」

『あ、い、嫌でしたらいいんです。すみませんでした』

「ちっ、違う違う!ビビッただけ!嫌じゃねぇし!」


咄嗟に出た声の所為で嫌がってると思われちまったけど、仕方ねぇだろ。

日吉が、あの日吉が、あのナマイキで可愛くない、いや可愛いけど、とにかくあの日吉が俺に相談したいなんて。


「どうしたんだよ?お前が俺に頼むなんて、よっぽどのことがあったんだな?」

『はい……今から向日さんの家に行ってもいいですか?』

「えぇええ!?」

『ダメですか…?』

「いっ、いやっ、ダメじゃないダメじゃない!」


今度は家に来たいだと!?

しかも、今日は金曜日。つまり、明日は土曜日。

つまり、休み。

つまり、つまり、お泊り!?


俺は今までにないくらいの衝撃を受けた。

だって日吉から、日吉から泊まりたいだなんて!
あ、まだ泊まるとは言ってないか。でも、家に来たいなんて!


『じゃあ、今から行きます』

「いいけど、電話じゃダメなのか?電話でも相談くらい乗ってやるぜ?」

『…たぶん、会わないと俺の置かれている状況は理解できないと思うので』

「…ふーん?ま、いいや。待ってるからな。もう外暗いし、気をつけて来いよ」

『はい、ありがとうございます』


そういう素直な声が聞こえて、電話は切られた。

…ちょ、今からムラムラしてきたんだけど、どうしよう。

日吉は真剣に悩んでるっぽかったのに、不謹慎すぎるだろ俺ぇぇぇ!



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