氷帝V
□愛しの若様
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やっべー。すっかり遅くなっちまった。
部活がないから日吉と帰る約束してたのに、先生につかまっちまった。
俺は急いで日吉が待つ校門へと走る。
グラウンドに出ると、日吉が塀にもたれて待っているのが見えた。
「おーい!ひよ…」
「ひっよC−!!」
俺が声をかけるよりも先に、ジローが日吉の胸に飛び込んだ。
ちょっ…何やってんだアイツ!
「芥川さん!?」
「ひよC−。ちゅー」
「っ!?」
!!??
ここからでもはっきり見える。
ジローの奴、日吉にキスしやがった!
しかも唇に!
「なっ、何するんですか!」
「べっつにー。だって日吉可愛いんだもーん♪」
「やめてください!」
俺はムカついて2人に駆け寄る。
俺の姿を捉えた日吉は、罰の悪そうな顔をした。
「おいジロー!何やってんだ!」
「見つかっちゃったー。じゃあねー2人とも!」
「あぁ!待ちやがれ!」
俺の制止も聞かず、さっさと手を振って帰ってしまうジロー。
…この怒りはどこで発散させりゃいいんだよ。
「…あの、向日さん」
「あ?」
日吉がおずおずと声をかけてくる。
俺は不機嫌丸出しで返事をする。
「い、今のは…」
「さっさと俺ん家行くぞ」
「え、あの…」
「いいからついてこいよ」
そう言って歩き出すと、日吉も何も言わずに俺についてきた。
あーあ、こんなにイラつくなんて、宍戸の言葉を借りればまさに激ダサだぜ。
でも俺の怒りは収まるはずもなくて、ろくに会話もしないまま俺の家に着いた。