四天宝寺U
□キングとバイブル
2ページ/6ページ
「はぁ〜、ほんまに跡部クンのエスコートは無駄がないわ〜」
「ふん、当たり前だろう?」
東京駅をブラブラして、ごっつ旨いランチをご馳走してもらって。
今は道の端のベンチで休憩中。
ほんまに楽しい。帰りたない。
「ありがとうな、跡部クン」
「礼にはおよばねえよ」
「そないなこと言わんと。せや、ジュースでも奢らせてえな」
「は?おい、いいって」
さっき通ったとこに自動販売機があったはずや。
俺に続いて立ち上がろうとする跡部クンを手で制する。
「跡部様の口に合うかわからんけど、缶ジュースくらい奢らせてえな。ランチも奢ってもろたし、だいたい、跡部クン小銭持ってへんやろ」
「だけど、俺様が奢ってもらうなんて、」
「ええから。ここでちょお待っといてな」
俺はそう言って来た道を引き返す。
跡部クン、奢ることはあっても奢られることなんて滅多にあらへんのやろな。
俺だけ、特別や。きっと。
自販機は見つけたけど、やっぱり少し悩む。
跡部クン、何がええんやろ…
紅茶が好きなんは知っとるけど、たっかい紅茶飲んどる奴に缶の紅茶やなんてなぁ…
普段飲まんやろし、ここは無難にオレンジジュースかコーラか、その辺でええやろ。
小銭入れから金を取り出そうとしたときやった。
後ろから黄色い声が聞こえてくる。
「あのー、お1人ですかぁー?」
「え?いや…」
振り向くと、同い年か、少し上くらいの女の人が3人。
うわ…またかぁ。俺逆ナン苦手やのになぁ…
「よかったら、一緒に遊びませんかー?」
「や、連れがおるから…」
「関西弁だー!かっこいいー!」
満面の笑みで財布を持っていない方の腕を引かれる。
うぅ…こない好意向けられると、キツい言い方できへんしなぁ…
「ほ、ほんまに堪忍してえな…」
ほんまに困った。
跡部クン待たせてるし、早よ戻らんと…
「おい」
低い声と共に、後ろから肩を強く引かれた。
後ろを向くと、機嫌の悪そうな跡部クンの顔。