四天宝寺U
□医者の不養生
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「しゃあないっすね…ほな車出しますから、病院行きましょ?」
「ええ…お前がそばにおったら、治るから…」
「んなわけないでしょ。自分とこ行くん気が引けるんやったら、他んとこでも…」
「ええから…お前が、看病してや…」
うぅ、アカン。なんかごっつ寂しい。
ほんまに死ぬかも、俺……
「…謙也さん、何でそない甘えてくるん……?」
「しゃあないやろ…俺だって辛いんやし…って、え?」
頬に冷たい水が落ちてきた。
…財前が、泣いとる。
「え?え?ちょちょ、財前!?」
「何でそない甘えてくるんすか…死期が近いからですか?謙也さんほんまに死んでまうんですか…?」
「ちょ、頼むから泣かんで!」
俺はだるいけど頑張って腕を上げ、財前の涙を拭ってやる。
髪を撫でると、財前は更に泣き出した。
ぁあー、もうどないしたらええの?
「大丈夫やで!謙也さん元気やで!」
「嘘や!あんなに弱気やったのに…」
「ちゃ、ちゃうちゃう!ちょっと調子乗りすぎてん!」
ほんまは結構辛いんやけど、調子乗った、ってことにしておこう。
そっちのが財前も安心するやろ。
「ほ、ほんまですか…?」
「ほんまや、ほんま」
「謙也さん死なへん?」
「死なへんよー」
よしよしと何度も頭を撫でてやる。
財前は少し落ち着いたみたいで、ごしごしと目元を擦った。
「お、俺、ほんまに心配したんですから…謙也さんいきなり倒れるし、このまま起きんかったらどないしようって…」
「財前…」
「うぅ、具合悪かったん、気づかんくてごめんなさい…」
あ、アカン。心配させて悪かったっちゅーことよりも、嬉しいって思ってまった。
俺最低やなー…
「財前の所為ちゃうし。ごめんな。心配してくれてありがとう」
「ふぅ、うぅー…謙也さぁん…」
さっきまで素っ気なかったんは、きっと強がってたんやな。
ほんま悪いことしてもうたわ。