四天宝寺
□愛をください
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その後、さすがに家の風呂には入れんくて、財前の体を綺麗に拭いてやった。
いつも自分でやるって嫌がるけど、今日は俺に任せてくれた。
「もう朝練まで3時間もないけど…帰ろか、財前。送ってくで」
家出(未遂)したことなんか知られたないやろうと思って、今のうちに帰ることを提案した。
「ん…ええ。せっかく制服着てきたんやし、謙也さんと登校したい」
「そやかて…」
「ちゃんとオカンには謙也さんとこ泊まったってメール入れとくから。ちょっとだけやけど一緒に寝よ」
「財前……」
あぁ、何ていじらしいんやコイツは。
「俺が一生そばにおって守ったる」
「何言うてるんですか急に…」
「別に。これからも頼ってな」
隣に寝転がっている財前をぎゅっと抱きしめる。
財前も体を寄せてきて、滅多に見せん穏やかな顔で笑った。
「アホ。今日だけですわ」
「何や、可愛ないなぁ」
結構っすわ、と言って俺に背を向ける財前。
それが可愛くて、俺は思わずクスリと笑ってしもた。
後ろからもう1回抱きついて、耳元に唇を寄せる。
「ウソ。めっちゃ可愛いで。世界で1番好きや」
すると財前はまた俺の方を向いてくれて、唇にキスをされた。
「え、ちょ……///」
「ありがとう謙也さん。謙也さんのおかげで立ち直れそうっすわ」
「さ、さよか…そらよかったわ。ほな…もう寝よか」
「はい」
財前はそう言って静かに目を閉じた。
「お前は、何も不安になることなんてあらへんよ。俺がいつまでも愛したるからな」
柔らかい髪をそっと撫でて、俺もゆっくりと目を閉じた。
END
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