四天宝寺

愛をください
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「財前、俺はお前の家族やないからよくわからへんけど…」

「はい…」

「小さい子ぉが可愛いのは、まぁ、しゃあないんやないかな…こないなこと言うても、何も解決になってへんけど…
俺かて、小さい頃は翔太ばっか可愛がられて、嫉妬ばっかしとった。けど、今はオトンもオカンも平等に扱ってくれる」

「…………」


財前が小さく頷いた。


「それにな、お前はええ叔父さんやで。可愛いからって、甘やかしたりせんと、ちゃんと叱っとるやろ?
小さい子って、やっぱ叱られると拗ねるやん。けど、いつかちゃんと、大人に感謝する日が来るんやない?」

「はい……」

「俺も、小学生のときとかは、オトンもオカンも大嫌いやったわ。けど、今んなってわかる。俺のこと叱ってくれたんは、俺のためやったんやって。
そんときのオトンたち、今の財前と同じ気持ちやったんかもな…」

「謙也さん……」

「なんて、かっこつけてみたけど、俺は反抗期がちょっと早よ終わっただけや。
お前も、もうちょいしたら、親の気持ちもわかるやろ。
ごめんな、偉そうなこと言うて」


俺が頭を撫でてやると、財前は流れる涙を拭おうともせずに、何度も何度も頷いていた。


「だから、皆お前のこと嫌いになったんやない。捨てたわけでもない。ただ、色んなことに手ぇ焼いて、忙しいだけや」

「はい……」

「けど、俺はなんっにも忙しないからな。ずーっと財前のことかまったるで」

「謙也さんっ!」

「おわっ!」


軽くつかまっとっただけの財前が突然体重をかけてきて、俺は背中からベッドに倒れ込んだ。


「財前?」

「謙也さんっ。ありがとう。ほんま嬉しい…」

「うん…やから、家出なんかせんと、ちゃんと家帰ろな」

「うん…うん、ありがとう謙也さん、めっちゃ好き…」


謙也さん、ありがとう、好き、そればっか繰り返す財前が、めっちゃ愛しく思えた。


「謙也さん、今何時?」

「ん?えーっと…2時半くらいやな」

「ほな、まだ時間あるな。眠いかもしれんけど我慢してください」

「え?」

「抱いてください」

「…は、はぁ!?///」


何やコイツいきなり!

おかしいやろこの流れで!


「言葉だけじゃ足りひん。今、ものっそい誰かに愛されたいねん。な、俺に愛をちょうだい、謙也さん?」

「ぅっ…」


泣き晴らして真っ赤な目で見つめてくる財前は尋常やないくらい可愛くて、正直腰に来た。


「しゃあないな…下に家族おるから、声抑えてな」

「はい」

「よっしゃ。目一杯愛したるわ」



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