四天宝寺
□愛をください
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「財前!?どないしたんお前!?」
「謙也さんっ…」
自転車から降りると、チャリを止める暇もなく財前が胸に飛び込んできた。
「ちょ…」
「急にすんません。電話したけど出ぇへんくて…
家、来たら、チャリなくて、おらんと思ったから、待ってました」
あ、そうか。急いどったから携帯机の上に置きっぱや…
「す、すまんな。何があったんか知らんけど、とりあえず入り」
背中をぽんぽんと叩いてやると、財前はこくんと頷いて俺から離れた。
胸元が少し湿っとる気がしたけど、俺は何も言わずに財前の頭を撫でた。
チャリを止めて家に入り、階段を上がる。
財前は、俯いたまま黙って俺の後ろをついてきた。
「ほら、入り」
エアコンも電気もつけっぱなしにしだった部屋の扉を開けて、財前を中に入れてやる。
続いて俺も中に入り、コピーを無造作に机の上に置いた。
「財前、急にどないしたん?何かあったんか?」
「謙也さん、俺のこと好き?」
「へっ?///」
財前は俺の服の裾をぎゅっと握って、上目遣いでそう言った。
顔は真っ赤で、綺麗な目には今にも零れそうなほど涙が溜まっていた。
「い、いきなり何やねん…」
「ええから答えて。謙也さんは、俺のこと好きなん?」
ほんまに、どないしたんやろ財前…
いつもと様子が違いすぎる。
これはただ事じゃなさそうやと思って、俺は財前をベッドに座らせた。
「好きやで。今更何言うてんねん」
俺も隣に座って、そっと抱きしめてやる。
動揺しとるみたいやから、ゆっくりと背中をさすりながら。
「謙也さんっ…」
そう呟くと、財前の目からぼろぼろと涙が流れた。
俺は何て言ったらええのかわからず、ただ背中をさすってやることしかできんかった。