短編夢小説
□烏と兎
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あの人が、突然現れた少年に切り捨てられてしまいました。
あっけなく、なさけなく、あわれに、
あぁ、そんな、あの人が、私を、少女達を長い長い間閉じ込めて嗤っていたあの人が、たった一振りで死んでしまうなんて
信じられない、という気持と同時に私の心にポッカリと穴が開いてしまいました。
他の少女達は嬉しそうです。
『これでやっと解放される』
私は解放なんてされなくて良かったのです。
私はそんなこと望んでいなかったのです。
私は、ただ
あの人と共にいたかったのです。
あの人をただ愛していたのです。
戻ってきた自分の顔は悲しそうでした。
他の子は安らかな、そんな顔をしているのに
もう一度、自分の顔を身につけました。
でも、私は別に顔なんてどうでも良かったのです。
あの人といれるなら、顔なんていらなかった。
あの人が喜んでくれるなら、いくらでも捨てることができたのです。
私は急いであの人の元へ駆け寄りました。
時間がないのです。
私の魂はきっと天国へ逝ってしまうのでしょう。
あの人の魂は、恐らく地獄へと堕ちるのです。
もう二度と会えないのだと、感じました。