◆妄想部屋◆
□ギルディアス×アキ
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「…どう、思う?」
俳優であるリートと、モデルの自分が意味深に写っている週刊誌のページに目をやり、アキは試すようにギルディアスを見詰めた。
「『どう思う』か…とは、なかなか面白いことを聞くものだな。」
静かに、だが確実にギルディアスの声音が変わっていく。
「この、淫売…」
奥歯で噛み殺すような言葉と、週刊誌を握り潰す音に本能的にやばい…と、思った。
「…私にバレないとでも思ったか?」
それと同時に、ギルディアスの手に握り潰された週刊誌が風を切り裂く。
その瞬間、アキの頬に鋭い痛みと大きな耳鳴りが頭に響いた。
「私だけでは飽き足らず、外でも男を銜え込む…か。流石に、男をたらし込むのだけは上手い。」
アキの次の言葉も待たず、風を切って何度も丸められた週刊誌がアキを襲う。
「1045番、何を騒いでいるんだ!?」
扉の外で待機していた看守が、慌てて独房の中に飛び込んで来た。
「…まさか、そいつとも繋がっているんじゃないだろうな?!この淫乱めっ!」
次から次へと深く心臓をえぐる言葉の刃が、アキを攻め立てた。
「…1045番、やめないかっ!面会人、これ以上は危険です。今は、取り敢えず早くここから出て下さい。」
周りの音が全て掻き消され、ギルディアスの声しか聞こえない。
…違うのに。
そんな言葉を聞きたいんじゃなかった。
…痛い。
ココロも、カラダも、全てが…
ギルディアスが腕を振り上げる度に、鋭い痛みが全身に走り抜ける。
肉を叩き付ける音と共に、アキの白い肌が桜色に染まり始めた。
ただ、ギルディアスの中の自分の立ち位置を知りたかっただけ。
自分がまだ、彼に必要とされているのかどうか…
それだけだったのに…
半ば強引に看守に連れられ、半狂乱のギルディアスから抜け出した頃には、アキは放心状態で扉の外からギルディアスを見ていた。
「あの…大丈夫ですか?」
「…後悔させてやる。必ず、だ。」
ギルディアスがそう唸りながら、アキを睨み付ける。
それを静かに見詰めながら、アキは口の端から徐々に広がってくる鉄の味を、静かに噛み締めた。
不意に剥き出しにされたギルディアスの独占欲に、口元が緩んでくる。
それが、アキにとって自分は彼の中にいるのだと安心出来る瞬間だった。
感情をぶつけられて初めて、安心出来るような気がする。
それと同時に、抱え切れない程の不安にも襲われた。
鏡を見る度に、随分、彼の好みから外れてしまった自分に溜め息が洩れる。
ギルディアスが好むのは、今でも金髪の『少年』だ。
そのことがいつも頭から離れないからか、アキは時々、ギルディアスを試すようなことをしてはこんな目に遭う。
あちこちが痺れて、感覚がなくなってくる。
「…お怪我は?」
アキは何事もなかったように、上着のポケットに入れていたサングラスを掛けると看守に軽く手を挙げ、何も言わずに刑務所を後にした。
今にも、声を上げて泣き出したい気分だ。
あの手の週刊誌が、真実よりもおもしろ可笑しく書くものなのは、誰もが知っている。
だが…
そんなことは、ギルディアスには関係なかった。
自分の『もの』が自分以外を見ていることが気に入らないのだろう。
アキの足が自然と、スタジオへと向く。
今すぐ吐き出したい想いを胸に抱え、アキは見知った顔を見た瞬間、迷わずリートの胸に飛び込んだ。