◆妄想部屋◆
□リート×アキ
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「…私が彼に抱いていた感情は『愛』ではなく、『義務』だった。」
ぽつり…と聞こえるか聞こえないかぐらいの音量で、アキが小さく口の中で呟く。
「…そうか。」
アキの隣で影が揺れる。
きらびやかなネオンもなく、洒落たミュージックもない小さな居酒屋の片隅で、リートとアキは静かに盃を交わしていた。
「まさか、『習慣』だったとは…」
”気付かなかった ”
最後の言葉を日本酒と一緒に、飲み込む。
腰までの長い金髪をひとつにまとめ、白いスーツに身を包んだ碧眼の長身の美形と、その美形に負けず劣らずのオーラを放ち、黒一色で統一された同じく腰まで伸ばした黒髪の男が2人、肩を寄せ合い声を潜め合う。
「ガイズに言われて気付いたんだ…」
自分が、どんなに中身のないうすっぺらい存在か…
「ギルディアスを愛しているか?また、彼に愛されてる実感があるか?と問われ…何も答えられなかった…」
”答えられる筈がない ”
「『愛』なんて、なかったんだ…」
この感情は、愛なんかじゃなかったのだから。
「どんなに言葉を並べても、私には結局…何もない。」
言葉を区切る度に、日本酒を喉に流し込む。
「恋人だと…思っていた…」
なのに…
気付きたくなかった。
義務とか、責任とか、習慣とかじゃなく…
彼を愛したかった。
愛していると思っていたのに。
「『泣ける』ぐらいは、好きだったんだろう。どんな感情であったにせよ…」
肌を重ねれば、多少なりとも情は湧く。
「振り出しに戻っただけだと思えばいい。この先どうするかは…アキ、お前次第だ。違うか?」
新たにギルディアスとの関係を築きたいのか?
このまま、会わずに自然消滅をさせたいのか…
「私次第…」
どうしたいんだろう?
ギルディアスを愛せるのか?
ギルディアスを愛したいのか?
ギルディアスに愛されたいのか?
「解らない…」
まるで夜の海だ。
真っ暗で、足元が覚束ない。
気を抜くと、どこかにさらわれそうで立っているのがやっとだ。
「解らなくなってしまった…」
『愛』という感情がどんなものか…
肌を重ねれば、情が湧く?
それは、誰に対してもなんだろうか?
そう…
例えば、自分の隣で同じ酒を飲むこの男でも…