真夜中のお伽人形

□第2話 お伽ばなし
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美しきお伽人形

お前に名を与えよう

お前は私の望み

私の夢…



■第2話 お伽ばなし



図書館の床には絨毯が敷き詰められている。

中に入るのにはスリッパに履き替えなければいけない決まりだ。

床は真面目な清掃員が毎日掃除機をかけているせいでいつもチリ1つ落ちていない。

だから、制服のまま押し倒されてもスカートが汚れることはない。

でも…だからといって…。



「だっ…ダメです…私、こんな…」

「もう遅いですよ、道明寺桜子…僕からは逃げられない…。」

「んっ…」



金山の美しい声。

脳を酔わせる甘い香…。

何か言おうとする度、その唇はキスで塞がれた。



(や…ヤバいって…何でこんな…!)



押さえつけられ、動きを封じられながらも桜子は必至で心の中の警報音が聞こえなくならないよう理性を保った。

相手は学校一のイケメン。

いや、むしろそれを超えた『神』。

そんな男に今、自分はとんでもないことをされそうになっている。

これは夢。

いや、紛れもなく現実だ。



「私…っ…こういう事…した事…」

「だから何です…?奪わないでくれとでも?」

「や…っ…!」

「そうはいきませんね。」

「ひっ…!」



首筋に触れた唇。

べろり、と舐められた感触。

怖い。

肌が泡立つのが分かった。



「…僕たち”香”が出会うことがどれほどの奇跡である事か…。」

「コウ…?」

「自分が何者かすら知らないとは…ますます…逃がすわけにはいきません。」

「やっ…!あぁああ…!!」

「ほら…分かりませんか?」



服の下から滑り込む指の感触。

ぞくりとした感覚が背骨を駆けあげる。

その途端、金山の香とは違う香が桜子の周囲を取り巻いた。

甘く、慣れ親しんだ食欲を誘うその香…。

それは間違いなく、桜の香であった。



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