真夜中のお伽人形

□第1話 プロローグ
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私なんか、全然きれいじゃない。

私なんか、全然かわいくない。

そう思っている子に、何故か奇跡が起きたりする。

ああ、違う。

あの子にとっては…不幸だったのかもしれないね。



■第1話 プロローグ



中学の時の彼氏。

初めてのエッチの相手。

桜子は、その類の話題には全然ついていけなかった。

好きな人はいた。

でも、その人には別の好きな人がいた。

だから、告白なんてできなかった。

はい、以上。



「…ありえないでしょ?」

「そんな事ないって。道明寺さんだけじゃないよ。」

「そうかなぁ…。」



入学式前の説明会で「リア充じゃない」自分を理解してくれる友達ができたのは桜子にとって運が良かった。

高校に行ったらみんな最低でも2〜3人と付き合った事があって、もちろん処女なんてとっくに捨てていて…。

話についていけず、キラキラした女の子たちばっかりの中で自分だけきっと仲間外れ。

そんな不安が3月に合格通知をもらった時からず〜っとあった。



「考え過ぎ考え過ぎ。雑誌と少女マンガの読みすぎだって。」

「でも…。」

「ありえないよそんなリア充ばっかりの高校。もしそうだったら私もヤバいって〜。」



中二の頃、「童貞が許されるのは小学生まで」という話を聞き、大ショックを受けたのも記憶に新しい。

自分は女だけど、「処女もきっとそうだ」という気になって気分が暗くなった。

でも、そんなウチアケ話を天木千歳は「大丈夫だ、問題ない」と笑い飛ばしてくれた。



「ウチの学校レベル低い方じゃないじゃん?勉強と恋愛なんて、両立できなかったっしょ?」

「確かに…中3なってからはそれどころじゃなかったけど…。」

「ねぇ、知ってる?宮沢賢治って童貞のまんま死んだらしいよ。そういう偉人もいるんだし…私はあんまり恋愛経験にこだわりすぎないほうがいいと思うけどなぁ。」



『銀河鉄道の夜』や『雨ニモ負ケズ』のあの人は一生恋愛に縁がなく死んだらしい。

きっと、それよりはマシだ。

高校で何とかなる。

桜子はそう思い、何とか自分の恋愛コンプレックスを押し込んだ。

そして…とうとう入学式の日を迎えた。




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