朝昼+夜
□僕の守り神
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僕のうちでは、毎朝不思議なことが起きる
「今日はみかんか……でも誰なんだろうこれ」
毎朝、毎朝、
身体が弱くて布団から出れない僕の枕元には“誰か”からの贈り物が届く
昨日は椿の花
その前は焼きたての餅
さらにその前は焼魚
それらは家のあちこちから盗まれた物で、始めこそうちの人たちは僕の悪戯では無いかと疑ったがそれにしては無理がある悪戯で
結局犯人が誰かわからず、みんなして首を傾げた
「美味い……」
ぱくりとその実を一切れ口に入れると甘酸っぱい美味しさが幸せとともに広がった
やや寝ぼけた頭をはっきりさせるすっぱさを味わいながら障子を開いて綺麗に整われた庭に広がる雪を見て、微笑んだ
―――誰かはわからないが、ありがとう
自分の部屋から殆ど出ることが出来ない僕にとっては、この正体不明の貢ぎ物が一日の一番の楽しみだった
「幸太」
「父上」
「今日はみかんか……今が旬だからな、美味いだろう?」
「はい」
いつの間にかこちらに来ていた父がみかんを見て意味深に笑いながらぽんっと大きな掌で僕の頭を撫でた
―――父上は、父上だけは貢ぎ物を見ていつも楽しそうに笑う
他の侍女はみな首を傾げるばかりなのに
「もしかして、父上は誰がこれを持ってきてくれてるのか知ってるんですか?」
「確証は無いが多分な、何となくはわかるよ」
「誰なんですか?」
「こればかりは自分で捕まえないとなぁ。それの送り主に出会えたらきっととても良いことが起こるから、身体に気をつけて頑張ってみなさい」
楽しそうに楽しそうに笑って、父上は朝食へと僕を連れだった
誰がくれてるんだろう。疑問は日に日に深まるばかりだった