テニプリ

□Double Chain
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【スキ】と【キライ】の感情で編み上げられた強固で冷たい鎖。
対極の感情の狭間で揺れる俺の心と身体をギリギリと締め上げる。


いつも最終的に辿り着くのは【嫌い】という拒絶を示す言葉だ…。


アイツはいつも俺の心を掻き乱す…。


「宍戸先輩♪」


「うわっ!お前、いきなり抱きつくなっつーの!
激ダサだぜっ!」


「だって…先輩、イイ香りがするんですもん♪」


「いい加減、離れろよっ」


「イ・ヤ・で・す!」


ギリリ…ギリリ…





部室で顔を会わせれば、宍戸さんにまとわり付き犬のように匂いを嗅ぐ鳳。
宍戸さんのレギュラー復帰に鳳が一役かってからダブルスを組むようになった二人。
それからというもの、放課後はこの光景を目にすることが増えた。


「おぃ、日吉。どないしたん?
そない強くガットを握ったら、お前の指が切れてまうやろ?」


歯噛みする代わりに、ガットに指を掛け血が滲むほど強く握っていた。


『別に…。』


無意識にするようになったクセ。


「別に…って、お前。血ぃ滲んどるやないかい」


『……。』


血が滲んでいたって痛くも何ともない。
痛いのは、いつも指なんかじゃなく…この左胸だ。
その痛みを堪えるようにユニフォームの左胸の辺りをグッと掴んだ。


痛みと共に心を覆うのはとてつもなくドス黒い闇。


嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い…
鳳、お前なんか大っ嫌いだ!!


そう思う度に、冷たい鎖は俺の心を容赦なくギリギリと締め付け痛みだけを残す。


本当は…あの屈託のない笑顔も、声も、温かそうな指も手も、抱き締められるのも…俺であればいいのに、と願う。


けれど、鳳が好きなのは俺じゃない。


「日吉〜。…なんか今日、オカシイC〜」


「ったく。どないしたっちゅーねん」


出会うのは、宍戸さんよりも俺の方がずっと先だったはずなのに…。
どこで、何が違ってしまったんだろうか?


ジャレつく鳳と宍戸さんを横目に部室を出る。


『……。』


これ以上、見ていられない。
見ていたくない!!


俺の四指には切り傷が残り、またギリギリと鎖が食い込む音がした。



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