遊戯咏
□落花流水・拾
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小さく機械音のする自動販売機の前で冷えたミネラルウォーターを買う片倉を見ながら政宗は部屋の鍵を回していた
(見つかったのに慌てもしねぇ……わざと、着いて来た訳じゃねぇのか?………いや、コイツは慌てるような馬鹿じゃねぇか…)
「お前は何が良い」
「……おごってくれんのか」
「こんなモン奢る内にも入らねぇだろ」
「……アンタと一緒で構わねぇよ」
ちょうどそれが欲しかったんだ、と政宗が言うと片倉は少し口角を上げた、ように見えた
慣れない時間に起きたからか何時もの様に怒鳴る気力も出ない。
勿論この間片倉にされた事を政宗は忘れた訳ではないし許す気も無いが、不思議と二人で居る事に、話している事が心地よく感じられていた
「で?何でアンタが此処に居る?しかもあいつらの部屋に…」
「たまたま今日物理教師の会合があってな…そこの部屋に泊まって寝ようとしてりゃあ隣の部屋から壁を叩く音がしやがる、あまりにうるさかったからな、半分キレかけてドアを蹴ってやったら中からべろんべろんに酔っ払った前田が出てきやがって引きずり込まれた」
「あいつら…酒盛りなんかしてやがったのかよ」
「何でも前田が真田と進展出来たのに長曾我部が毛利に奢らされまくった腹いせに長曾我部が飲み出したらしいがな」
「……まぁ俺が居たからな……元親には、悪い事しちまった」
「仕方ねぇだろう五人で前田と真田が消えちまったならな」
実はこの話は嘘で会合などある訳は無いし酒を持ち込んだのは片倉だったりするのだが政宗はすっかり信じてしまった
「せめてもう一人居ればな………なぁアンタ、いつ帰るんだ今日か?」
「いや…色々と土産も買わなきゃならねぇし、たまの旅行だからな…あと一日くらい居てみようかと思っているが」
「…………前田と真田の邪魔するのも気がひけるしな……アンタにはまだ色々聞かなきゃならない事がある」
「………」
「アンタさえ良ければ今日の京都観光一緒に回ってやっても良いぜ?」
ニィ、と笑いながら政宗が言えば片倉もまた笑みを浮かべミネラルウォーターを飲み干して言った
「随分な誘い文句だな」
「誘っちゃいねぇよ」
「俺の買い物に付き合って貰う事になると思うが構わねぇか」
「ああ、あいつらと甘味巡りするより楽しそうじゃねぇか」